『サラの鍵』(原題:Elle s’appelait Sarah)
監督:ジル・パケ=ブランネール
出演:クリスティン・スコット・トーマス,メリュジーヌ・マヤンス,ニエル・アレストリュプ,
エイダン・クイン,フレデリック・ピエロ,シャーロット・ポートレル他
ミニシアター系でロングラン中と言ってもよさそうなフランス作品。
ふだんは整理券のみ配布の劇場で、本作は座席を指定しています。
この平日もそこそこの客入り。
原作はタチアナ・ド・ロネのベストセラー小説。
前述の『グッド・ドクター 禁断のカルテ』でこの日のチョイスをちょっぴり後悔しましたが、
その後に本作を観て、気分が昂揚しました。
2009年のフランス、パリ。
アメリカ人の女性ジャーナリスト、ジュリアは、フランス人の夫と娘とともに暮らす。
夫が祖母から譲り受けたマレー地区のアパートへの引っ越しを検討中。
そんな折り、ジュリアはヴェル・ディヴ事件の記事を書くことに。
ヴェル・ディヴ事件とは、1942年7月16日から17日にかけて、
ナチス占領下のフランスでユダヤ人約13,000人がフランス警察に検挙され、
ヴェル・ディヴ(=屋内競輪場)に運ばれたあと、ドイツの強制収容所に送られた事件。
(この事件については『黄色い星の子供たち』(2010)をどうぞ。)
政府はこの事実をフランス史の汚点として長らく認めようとしなかったため、
ジュリアの同僚であるまだ若いフランス人たちは何も知らず、
自国がおこなったことに衝撃を受けている様子。
ふと、ジュリアの頭に疑問が生じる。
祖母がマレー地区のアパートを手に入れたのは1942年の8月。
この地区にはユダヤ人が大勢住んでいたと聞いている。
戦争中、なぜ祖母たちは急に引っ越しを?
ヴェル・ディヴ事件の直後に空室が出たというのは単なる偶然なのか。
調べるうちに、このアパートに住んでいたユダヤ人一家の娘サラのことを知り……。
物語は、2009年と1942年を交互に見せながら進みます。
当時10歳のサラは、フランス警察がアパートに押しかけたさい、
弟のミシェルに納戸の中に隠れるように言います。
これはただのかくれんぼだから、怖がらないで。
私がいいって言うまで出てきちゃ駄目よ。必ず迎えにくるから。
そのままヴェル・ディヴから強制収容所へと連れて行かれたサラは、
弟を助けに行かなきゃ、その一心で収容所を脱出します。
サラを助ければ自分の身も危うくなる。
そうわかっていながら彼女に手を差し伸べる幾人かに、
良心はきっとある、そう信じずにはいられません。
老夫婦の助けでなんとかアパートへ辿りつきますが、
弟が生きているはずもなく、凄まじい光景を目にするサラ。
それは彼女の心に一生影を落とし続けます。
サラがどこかで生きているかもしれないと考えたジュリアは、
45歳で妊娠中でありながら東奔西走。
真実を知ることでみんなが幸せになるかどうかはわからないと思いながら。
罪の償いかたって、どうすればいいのか。
独りよがりになっていることが多いでしょう。
だけど、本作を見れば、これもひとつの償いかた。
ラストには読めるシーンが待っていましたが、
そうであったがゆえに涙を誘います。
しかし、どれもこれも泣いてからに、
最近涙が一滴もこぼれなかったのは前述の作品ぐらい。(^^;
—–