『この愛のために撃て』(原題:À Bout Portant)
監督:フレッド・カヴァイエ
出演:ジル・ルルーシュ,エレナ・アナヤ,ロシュディ・ゼム,
ジェラール・ランヴァン,ミレーユ・ペリエ,クレール・ペロ他
観た順序とはテレコになってしまいましたが、
前々述の『海洋天堂』とハシゴした1本。
85分のコンパクトなフランス作品にして、傑作。
原題は“À Bout Portant”。
直訳すると「至近距離から」という意味らしく、
そう言われてもなんのこっちゃわかりません。
ベタな邦題で、窓口で言うのも恥ずかしいぐらいですが、
観終わればしっくりと来て、魂を撃ち抜かれた気分です。
パリ市内の病院に勤務するサミュエルは、心優しい看護助手。
出産間近の美しい妻ナディアと、生まれてくる子どものため、
正式な看護師になろうと勉強にもいそしんでいる。
質素だが、幸せいっぱいの毎日。
ある日、バイクにはねられた男性が病院へ搬送される。
意識不明の重体ではあったが、一命は取り留めた模様。
ところが、不審な人物が忍び込み、この患者の殺害をはかる。
偶然通りかかったサミュエルに驚いた侵入者は逃亡。
翌朝、殺されかけた患者は前科者のサルテであることがわかる。
帰宅したサミュエルは待ちかまえていた何者かに襲われ、身重の妻が誘拐される。
犯人から、3時間以内にサルテを病院から連れ出せと指示がある。
警察に通報すればナディアが殺されてしまう。
決死の覚悟でサミュエルはサルテを連れ出すのだが……。
冒頭、サルテが何事かに遭い、逃走するシーンが映し出されます。
スピード感に溢れているけれど、最近よくあるアクション映画のように、
何が起こっているのか目がついていかないほど速い、というわけではなく、
中年以上にも親切な作品と言えましょう。(^o^)
善人サミュエルに最初は同情することしきり。
やがて行動を共にすることになるサルテは、
チンピラかと思いきやかなりのキレ者、大物悪党の様子。
大がかりな陰謀が判明し、ビビるサミュエルの前で、ドキュンバキュン。
極悪に思えたサルテだけど、理不尽な殺しはしません。
血も涙もないはずの彼が、義理と人情に厚いところを見せて、
次第にサルテにも共感が湧いてきます。
妻を救いたい一心で無謀な行動に出るオッサンと、
世間からはみ出したホントはいいオッサン。
このコンビを応援せずにいられましょうか。
実は、撃ったのは初めのほうの一発だけ。
しっくり来る邦題だと言いましたが、このズレもナイス。
決して君を不幸にはしない。
その気持ちがあれば、撃てなくてもこんなふうに。
「善人顔すぎる」。
この台詞がツボにハマり、思い出しては笑っちゃう。
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