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『その日のまえに』を読みました。

体調不良だったため、先週は映画を観る気になれず、
それでも阪神の行方は気になって眠れないので、
甲子園で生観戦した日以外は、本を読みながらTV中継を観ていました。

どうも馴染めなかった映画版『その日のまえに』(2008)。
だけど、大林宣彦監督の作品というのは不思議なもので、
これが大好きな人の気持ちはなんとなくわかるんです。
私は嫌い、駄目、こんな作品のどこがいいんだという感じではなく、
馴染めないと言いつつ、ノスタルジックな気分にさせられて、
嫌いだというひと言では済ますことができません。

そこで、重松清の原作を読んでみたら、
映画の風景が目の前にどんどん広がってきて、
ああ、映画を観てよかった、
それから原作も読んでよかったと、心底思いました。

原作は、「ひこうき雲」、「朝日のあたる家」、「潮騒」、
「ヒア・カムズ・ザ・サン」、「その日のまえに」、
「その日」、「その日のあとで」の7つの短編から成ります。

「その日のまえに」に出てくるイラストレーターとその余命わずかな妻に、
映画では南原清隆と永作博美を配し、
夫妻が「潮騒」の舞台となる町を訪れていました。
その町には「朝日のあたる家」という喫茶店があり、
原作のDV被害女性と彼女を気遣う男性には宝生舞とヒロシがそれぞれ扮し、
原作とは立場を変えて、ウェイトレスと客として登場します。

「潮騒」の主人公である末期癌患者には筧利夫。
彼の小学校時代の同級生を今井雅之が演じ、
南原・永作と筧・今井は、この町の商店街ですれちがいます。
筧と今井が足を運ぶ海辺に昔あったかもめハウス。
そこのおばばを演じる根岸季衣はまるで原作の雰囲気。

また、南原・永作の息子たちは、
「ヒア・カムズ・ザ・サン」の舞台となる街角で、
渡辺えり子演じる女性を見かけることになります。
そして、空にひとすじの「ひこうき雲」。

原作を読んだら、大林監督の力量に脱帽。
原作をきちんと紡ぎながらも大林ワールド全開で、
あれほど馴染めなかった作品ですが、
もう一度観たら印象が好転しそうな気が。
宮沢賢治の『永訣の朝』の使い方にも感服。

重松清には心を射貫かれました。
特に「ひこうき雲」、「潮騒」、「その日のまえに」に。
同年代ということもあるのか、ものすごく感情移入してしまいます。
死と向き合うことをちらりとでも考え始めたらぜひ。

大切な人には、大切な想いをしっかりと伝えたい。
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