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『七回死んだ男』と『恋はデジャ・ブ』(その3)

反復落とし穴に陥るという自分の特異体質に気づいた当初、
久太郎はこの体質を世の中のために利用できるかもしれないと考え、
どこかで起こる事故や事件を防ごうと、朝刊を読みあさります。
しかし、日本全国どこへでも飛んで行くわけにもいかず、
どんなケースなら自分が助けるのかの判断基準を決めかねて、
スーパーマンのような存在になるのはあきらめます。

9日間我慢すれば次の日がやってくる久太郎とちがい、
いつまで2月2日が続くか皆目見当がつかないフィルは、
パンクスタウニーの町から出ることもできないため、
町の中だけで人助けをするようになります。
毎日、同時刻に木から落ちる子ども、レストランで喉をつまらせる紳士、
行き倒れになりかけている物乞い。彼らを助けるのがフィルの日課に。
さらには、ピアノや氷の彫刻技術まで習得し、
周囲の人びとを楽しませます。

最初は自己チューでいけ好かない男だったフィルが、
人の幸せこそ自分の幸せだと思うきっかけとなったのは、
女性プロデューサーのリタと過ごした日でした。

何度目かの2月2日、リタに事情を打ち明けると、
リタはもちろん怪訝な顔。
けれど、その日をフィルと過ごすうち、リタは彼の言葉を信じ始め、
フィルに再び2月2日が来る瞬間を見定めようとします。
夜が更けて、睡魔としばらくは闘いますが、眠り込んでしまったリタ。
すやすやと眠る彼女に向かってつぶやくフィルの台詞はとても切ない。
「言えなかったけど、思いっきり君を抱きしめたかった」。

「(毎日が2月2日であることよりも)、もっと悲しいのは、
明日になると君はこのことを全部忘れてる。僕に冷たい顔。
でも、明日、将来どうなろうが、今は幸せだからいい」。
そう思えたときに、2月2日のフィルの過ごし方が変わります。

これはひそかに不朽の名作だと思っているんですけど。

そうそう。
『恋はデジャ・ブ』で、フィルにとって見飽きたクイズ番組のシーン。
出題されると即座に回答するフィルに宿泊客たちが喝采を送ります。
これはいいんです。とってもお茶目。
ところが『七回死んだ男』では、
9日間ずっと中継される、同じ日の巨人vs阪神。
巨人ファンとアンチ巨人ファンが混在する家族の前で、
久太郎が試合の展開をすべて言い当てるので、みんな驚愕。
巨人が中盤に1番から9番まで(投手まで!)
9連続ホームランで勝利って、虎ファンとしては、なんでやねん。(–;
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