韓流ブームの到来前、「いちばん好きな映画は?」と聞かれたら、
私は迷わず『八月のクリスマス』(1998)と答えていました。
流行りものに背を向けたくなる性分なので、
『冬ソナ』以降、そう答えることは避けていますが、好きなものはやはり好き。
同じ映画を何度も観るほうではない私も、この映画だけは別。
日本で公開された1999年、大阪・九条の小さな映画館に
ひとりで足を運んで以来、何度となくDVDで観ています。
山崎まさよし主演でリメイクされたのが『8月のクリスマス』(2005)。
昨年の秋に公開され、今年の春先にはDVD化されましたが、
オリジナルがあまりに好きなもので、
リメイク版に手を出せないまま半年。やっと観ました。
ストーリーはおおむねオリジナルに忠実です。
とある町で小さな写真館を営む30代の寿俊。
一見、健康で明るく穏やかな彼は病魔に冒され、余命わずか。
自分の運命を受け入れ、それを知っているのは家族のみ。
静かに最期を迎えることだけを願い、
もう二度と恋はしないと誓っていた彼の前に現れたのは
小学校に臨時教員としてやってきた20代前半の由紀子でした。
写真館の店主と客として過ごすうち、お互いに恋心を抱くようになります。
ある日、寿俊は倒れて入院しますが、由紀子はそのことを知りません。
ずっと休業中の写真館の扉の隙間から手紙を入れる由紀子。
しかし、寿俊から返事が来ることはなく、
由紀子は別の町へ異動することを決めてしまいます。
オリジナルとリメイク版が決定的に異なるのはこの後。
どちらも、退院した主人公が手紙の返事をしたためます。
オリジナルではこの返事が投函されることはありません。
リメイクでは寿俊の死後、由紀子のもとに届きます。
オリジナルのほうが圧倒的に好きですが、
リメイクのほうが明らかにわかりやすく、
また、オリジナルのラストシーン、タリムの笑顔の意味も、
リメイクを見ればわかるでしょう。
突然会えなくなった大好きな人。
その理由がその人の死であることを
知ったほうがいいのか、知らないほうがいいのか。
オリジナルとリメイクを両方観ることで考えさせられます。
「僕は君のことが、本当に、本当に好きでした。
君に逢いたい。君を抱きしめたい。一緒に生きていたい。
君は神様がくれた、最高のプレゼントです」。
遺されたのがこの言葉なら、やっぱり知りたい。
でも、死ぬ前に伝えたい、伝えてほしいと思いませんか。
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