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『好きだ、』

『好きだ、』
監督:石川寛
出演:宮崎あおい,西島秀俊,永作博美,瑛太,小山田さゆり他

「言いたいのに言えなかった、
 そんな想い、覚えていますか」。

私よりふたつ年上の石川寛監督は、30代のある時期、
どうしようもなく好きだった人にそれを伝えることができなかったそうです。
同じことが10代の頃の自分にもあったことを思い出し、
今、このことと向き合わないと、先に進めないような気がして、
本作を撮ることにしたそうです。

17歳のユウは、同級生で元野球部のヨースケに密かな想いを寄せている。
ヨースケは野球部を引退してから急に音楽に目覚め、
放課後の河原で、自作の曲の出だしの部分ばかりを
ヘタクソなギターでつま弾いている。
ヨースケもユウのことが好きなのに、言えない。
ただ、横に並んで座っているだけのふたり。

ユウの姉は半年前に大切な人を亡くした。
話のきっかけとしてユウの姉を気遣うヨースケに、
ユウは「お姉ちゃんを元気づけるために会ってあげて」と頼む。
それからたびたび会うようになるユウの姉とヨースケ。

ある日、ユウの姉が事故に遭い、昏睡状態に陥る。
ヨースケとの待ち合わせ場所に向かう途中だった。
以来、ユウとヨースケは会わなくなってしまう。

17年後、34歳になったヨースケは
CFディレクターとして音楽業界で身を立てていた。
素人っぽい音を出せるギターの弾き手を探していたところ、
偶然やってきたのはユウだった。
ヨースケがあの河原で弾いていた曲がユウのギターから奏でられる。

台本なしで撮影されたと聞き、この間(ま)に納得しました。
この間にドキドキできるかどうかで
本作を好きになれるかどうか、分かれると思います。
河原でふたり並んで、手をつないでほしいと思っているユウ。
たぶん、それをわかっているのに、ポケットに手を突っ込むヨースケ。
「そこは手をつかむとこなんだよ!」と思わず言いたくなります。
向かい合っても何もできないヨースケにユウがキスをすれば、
逃げるように帰ってしまうヨースケ。
どうしてあのとき、何もできなかったんだろうという思いが
ずっとずっとヨースケの心に残っていることが伝わってきます。

17年の間、想い続けていたわけではないのに、
お互いに頭の中から離れることはなかったふたり。
「好きだ」、たったこれだけの言葉なのに、
伝えるときのあの気持ち、伝えられなかったときのあの気持ち。
後悔しないように伝えたいな。
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