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『ステップ!ステップ!ステップ!』

『ステップ!ステップ!ステップ!』(原題:Mad Hot Ballroom)
監督:マリリン・アグレロ

観終わったあとは優しい気持ちでいっぱいになる、
今年観たドキュメンタリー映画の中では
いちばん好きな作品となりました。

ニューヨークの公立小学校では、児童育成プログラムの一環として、
1994年から社交ダンスが導入されているそうです。
60校以上の約6,000人の生徒たちが10週間のコースに取り組み、
最後には大々的なコンテストが開催されます。

メレンゲ、ルンバ、タンゴ、フォックストロット、スウィングダンスなど、
数々のダンスレパートリーの指導を受け、
各小学校の代表に選出されて優勝することを目標に、
厳しいながらも楽しい練習に励む子どもたち。

すべて子どもたちの目線で撮られています。
子どもと話をするとき、子どもを見下ろすのではなく、
子どもの目線まで大人が腰を下ろして話す、
それを守って撮影されたかのようなカメラワーク。

単にダンスの技術を学ぶだけではなく、
子どもたちは実にいろいろなことを発見し、
心と体で吸収していくように見えます。

犯罪予備軍と噂されていた少年は、ダンスの先生から紳士として扱われ、
敬意を払って接せられたことに心が動きます。
移民で、英語をほとんど話せない少年は、
ダンスを通じて周囲とコミュニケーションを取り、
宗教的理由から踊ることを禁止されている少年は、
音楽をかける係で練習に参加します。

それぞれが自分の居場所を見つけ、チームがひとつになり、
目標に向かって手を取り合う姿は
同じ年頃だった自分をも思い出させてくれました。

練習の合間の、子どもたちの他愛ない話には思わず笑ってしまいます。
男の子たちが言うには、「女っていつもエラソー。
自分が一番だと思っててプライド高すぎ。
好きになるのだって男が先じゃなきゃダメだし」。
それに対して女の子は、「男って思い込みね」。
愛や恋を真剣に語る彼らの姿はとてもとても愛らしい。

社交ダンスのポイントについて、先生曰く、
「目と目を見つめて踊ること。気持ちを込めて見つめて」。
「気持ちを込めて見つめて」と訳された台詞の原文は
“Take a look at each other like last time in your life.”。
つまり、「人生の最後のときのようにお互いを見つめて」。
小学生に向かって「人生最後のときのように」言われても。
でもそれがちゃんと通じるんですよね。

熱い熱い子どもたちと先生の姿。
一緒に一喜一憂してください。
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