ユ、ユルい、ユルすぎる。
三谷幸喜の作品を見逃すわけにはいかないと思いつつ、
あまりに評判になったので背を向けているうちに終映。
レンタル開始を心待ちにしていました。
期待が大きすぎてちょっと拍子抜け。
超豪華なキャストで溢れかえって
脱線しまくりながら進むのはいつものごとし。
しかし、予算を労せず採れるようになったゆえなのか、
以前はユルい中にも効いていた粒胡椒が
湿り気を帯びてしまったような感じです。
俄然おもしろくなったのは90分を過ぎてから。
ドタバタがすべて絡み合うこの後は好きです。
でも、個人的な好みで言えば、三谷さんの脚本だと
『12人の優しい日本人』(1991)を超える作品は出てきません。
短期間に特定の場所に多数の人物を登場させ、
その人間模様を描くのが群像劇。
有頂天ホテルの客室名の由来であると副支配人が説明し、
客室内にも貼られていたポスター、『グランド・ホテル』(1932)が
そのはしりと言われています。
「グランド・ホテル。人々が来ては去っていく。
何事もなく」の名台詞を残したこの作品にあやかり、
いまでは群像劇のスタイルを取る映画を
「グランド・ホテル形式」と呼ぶほどです。
他人の人生を覗き見するような群像劇は
最後に登場人物がどう繋がるのかが見物(みもの)。
『ゴスフォード・パーク』(2001)は大きな屋敷に集まった人びとの群像劇。
監督のロバート・アルトマンは群像劇が得意で、
『ザ・プレイヤー』(1992)はハリウッド、
『プレタポルテ』(1994)はパリ・コレクション、
『バレエ・カンパニー』(2003)はバレエ団の内幕。
ロサンゼルスの住宅街の9つの家族を描いた
『ショート・カッツ』(1994)が特にお薦めです。
同じくロサンゼルス郊外の住民の群像劇が
ポール・トーマス・アンダーソン監督の『マグノリア』(1999)。
クイズ番組のプロデューサー、司会者、出演者に混じり、
トム・クルーズがSEXのHOW TO本の著者で
カリスマ教祖的存在の人物を演じて話題に。
このラストは度胆を抜かれること請け合い。
まちがいなく反則技ですが、あまりの衝撃にひっくり返り、
呆然とした末に笑いこけてしまいました。
『THE 有頂天ホテル』を含め、
こうしたグランド・ホテル形式の作品は、監督の人脈が物を言うのか、
主役を張れる俳優が多数出演しているところも魅力。
こんなとこにあんな人が!の味はクセになります。
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