『ミリオンズ』(原題:Millions)
監督:ダニー・ボイル
出演:アレックス・エテル,ルイス・オーウェン・マクギボン,
ジェームズ・ネスビット,デイジー・ドノヴァン他
ダニー・ボイル監督の作品には、ドラッグや殺人やお金がつきもの。
キムタクのお墨付き、『トレインスポッティング』(1996)や
『シャロウ・グレイブ』(1995)、『普通じゃない』(1997)、
ディカプリオ主演でコケた『ザ・ビーチ』(1999)など、
世間からはみ出し気味の若者が主人公で、「夜」の街を連想させる作品が大半。
そんな監督が「自分の子どもたちに
堂々と観せられる作品を」と撮ったのが本作。
ジョニー・デップがジャック・スパロウ役を引き受けたのも
同様の思いからでしたね。
8歳のダミアンとその兄で10歳のアンソニーは
大好きな母親を亡くしたばかり。
つらい思い出の残る家をあとに、父親とともに郊外へ引っ越す。
ダミアンは引っ越しに使ったダンボールをかき集め、
列車の線路からほど近い場所に自分の隠れ家を作る。
ある日、ダミアンがひとりで隠れ家にこもっていると、
空からナイキのスポーツバッグが降ってくる。
バッグを開けてみると22万ポンド(約4,500万円)の札束が。
驚いたダミアンはアンソニーに報告。
警察に届けようとするダミアンにアンソニーは猛反対。
「届ければほぼ全額税金で取られる」とダミアンを言いくるめ、
ふたりだけの秘密にすることに。
あと10日余りで英国ではユーロに切替。
その日を過ぎれば紙屑と化すポンドをなんとか使い切りたいと考えたふたりは
あの手この手を考え始めるのだが……。
よからぬお金にちがいないとわかっている兄と、
神様からの贈り物にちがいないと信じている弟では
お金の使い方もちがうわけで、その対比が実に愉快。
秘密にしようと決めたものの黙っていられるはずもなく、
同級生に札束をちらつかせて威張るアンソニー。
一方、聖人オタクのダミアンは、貧しい人を救うのが最良と、
出会う人に「あなたは貧乏?」と聞いてまわります。
やたら人間臭い聖人たち、モルモン教徒やホームレス、
疾風を体感できる隠れ家、降誕劇のロバのぬいぐるみの影、
こうした脇役や小道具が楽しさを倍増させて、
従来の同監督の作品とは思えない「昼」の暖かさを感じます。
聖人の生没年にまで詳しいチビっ子オタクを考えつくとは
やはりボイル監督はタダ者ではありません。
このオチはとても好き。クリスマスだけど夏休み向き。
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