『理想の女(ひと)』(原題:A Good Woman)
監督:マイク・バーカー
出演:ヘレン・ハント,スカーレット・ヨハンソン,トム・ウィルキンソン他
オスカー・ワイルドの戯曲『ウィンダミア夫人の扇』の映画化。
スペイン、イタリア、イギリス、ルクセンブルク、アメリカと、
これだけ多くの国の共同製作も珍しい。
1925年にアメリカで初めて映画化され、
その後、イギリス、ドイツなどでも映画化されたことがあります。
死後1世紀を経てもワイルド人気は衰えない様子。
原作では1890年代のロンドンだった舞台を
本作では1930年代のニューヨークに移していますが、
ほとんど丸ごと南イタリアの避暑地での出来事。
ニューヨークの社交界に出入りするアーリン夫人。
彼女はすべての奥様方を敵に回している。
というのも、その美貌を武器に富裕な男性に近づき、
ちゃっかり愛人の座を手に入れてしまうからだ。
亭主を骨抜きにされた妻たちは、彼女のことが憎くて仕方ない。
金持ちの間を渡り歩き、どう思われようと
意に介さないそぶりを見せていた彼女だったが、
スキャンダルを恐れた相手から結局逃げられ、
ホテル代も支払えなくなって追い出される。
ニューヨークを後にした彼女は、一世一代の賭けに出るため、
南イタリアの避暑地アマルフィ海岸へ。
彼女が狙いを定めたのは若き名士ロバート・ウィンダミア卿。
彼はまだ20歳の可憐で美しいメグと結婚したところだった。
すべてを事前に調べつくしていたアーリン夫人は、
ロバートがメグへの贈り物を買いに入った店で彼をつかまえる。
その日以来、とある別荘で暮らし始めたアーリン夫人と
そこを頻繁に訪れるロバートの姿が目撃され、
よからぬ噂が飛び交う。何も知らないのはメグだけで……。
メロドラマを予想して観ていたら、これは上質のサスペンス。
物の見事に騙されました。
正直なところ、アーリン夫人を演じたヘレン・ハントは
決して嫌いな女優ではありませんが、
男を手玉に取る美貌の女を演じるとなると疑問でした。
ところが終わってみればハマリ役。
真相が明らかになった後はホロリと泣かされてしまいます。
世界一セクシーな女優に選ばれたばかりのスカーレット・ヨハンソンは
本作ではメグを演じて無垢そのもの。
脇を固める役者陣も素晴らしく、ロケ地のナポリも美しい。
原作を知らずに観たい大オススメ作。
「いい女は2種類しかいない。
全てを知り尽くした女と、何も知らない女」。
中途半端はあきませんかぁ。
—–