『海を飛ぶ夢』(原題:Mar Adentro)
監督:アレハンドロ・アメナーバル
出演:ハビエル・バルデム,ベレン・ルエダ,ロラ・ドゥエニャス,マベル・リベラ他
レディースデイの昨日、ダンナは出張中。
私はまっすぐ帰宅して野球を観るべきか、
本作を観るべきか、悩んだ末に映画館へ。
映画館への道中、ラジオを聴いていたら、
最近風貌がコワすぎる清原がいきなりホームランだとぉ!?
けれど、この作品は清原も吹っ飛ぶ。
上映開始後15分には泣きモードに入りました。
音楽に例えるなら、私の好きな、長調なのに切ない歌。
スペイン、ガリシア地方。
ラモンは20代の頃、引き潮の海に飛び込み、
頸骨を折って四肢が麻痺。
26年間、ベッドで寝たきりの生活を送っている。
兄の家の海の見える部屋で毎日を過ごす。
父、兄夫婦とその息子、誰もが彼を愛してやまない。
穏やかな笑顔を見せ続けるラモン。
しかし、ラモンは尊厳死を望む。
自ら命を絶つこともできないラモンには、
死の手助けをしてくれる者が必要。
その協力者が罪に問われることを案じ、
尊厳死を認めてもらえるよう、訴えを起こす。
人権擁護団体のジェネは、
彼の望みの正当性を弁護したいという女性弁護士フリアを
ラモンと引き合わせる。
彼の主張はやがてマスコミでも取りあげられ、世間が注目する。
テレビでラモンのことを知ったロサは、
生に満ち溢れた瞳のラモンがなぜ死にたがるのか興味を持ち、
ラモンを訪れるのだが……。
人に頼らなければ生きていけない人間は
笑顔の作り方を自然に覚えると彼は言います。
その笑顔はどこまでも優しくて、それを見ているだけで泣かされてしまいます。
すごいですよ、ハビエル・バルデムの演技。
彼はトム・クルーズ共演の『コラテラル』(2004)で
マフィアのボス役をやっていた人ですが、
今年36歳でありながら、実齢より20歳も上のラモンを
何の違和感もなく演じきっています。
彼がイマジネーションを働かせ、
空を飛んでいくその映像の素晴らしさ。
澄み切った空ではなく、薄く曇った大きな雲が空の半分を覆っていて、
それがまた言葉に表せないぐらい美しい。
結局彼は死を選びます。
でも、死をテーマにしていながら、こんなに生を感じ取れる作品に感謝。
原題/英題は“Mar Adentro”/“The Sea Inside”。
この邦題は出色。
観終わった直後より、今日のほうが効いている。
今のところ、今年ベスト1。実話です。
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