『星降る夜のリストランテ』は1998年のイタリア/フランス作品。
ローマのレストラン‘アルトゥーロの店’が舞台。
特に何が起こるわけでもない、群像劇っちゅうやつですから、
退屈な人はものすごく退屈かも。
こういうのって、隣のテーブルをのぞき見し、盗み聞く、オバハン的楽しみがいっぱい。
美貌の女主人フローラが客を迎え入れて、“アルトゥーロの店”の一夜が始まる。
常連の年老いた詩人は、給仕に「いつものリゾットで?」と聞かれ、
たまには想像を働かせようとメニューに見入る。
鱒の燻製パイ包み焼き、牛ハムのロール巻チーズ風味など、美味しそうな料理名の数々。
しかし、注文するのは「いつものやつ」。
ケバい母親と純情そうな娘のテーブルでは、
「尼僧になりたい」と娘から告白を受け、母は卒倒しかけている。
ひとりの女性と約束した男性が次から次へと現れて、
三角関係どころか五角関係まで進んでいるテーブル。
哲学の教授と若い美人女性の不倫カップルは、
彼女が彼の妻に宛てて書いたという手紙を読み始める。
女主人の姪は、誕生パーティーのために仲間を大勢呼んで、テラス席でグダグダと。
画家が絵を売りに来たり、魔術師が自分の名刺を持って宣伝に来たりもして、
店内は実ににぎやか。
いけすかない給仕に「皿ごと転がれ!」と魔術をかけると、
給仕がズッコケたりして、んなアホな。
こちらはヨーロッパ映画なだけあって、
『シェフとギャルソン、リストランテの夜』(1996)とはちがい、
リゾットを知らない客は出てきません。
客と給仕との会話もちょっと楽しい。
「野菜のスープ、セロリ抜きで」と客が注文すれば、
「ローマの料理は何でもセロリ入り。
トスカーナまで行けばセロリはないよ」と答える給仕。
ミラノ風カツがまるでフライだと給仕を呼びつける客。
「ミラノのカツは厚さが指1本分、バターで焼くんだ!
揚げるのと焼くのはちがう!」と怒鳴りつけるが、
給仕はシレ~っとして「ここはミラノじゃないんで」と答えます。
詩人はこう言います。
「友人でも他人でも、その人の食事を見れば
胃袋より心の状態がわかる。
食事のたのしみとは、共に生きることだ」。
原題の“La Cena”はディナーの意。
日本人客がカルボナーラにケチャップをかけるシーンはナメとんか~と思いますけどね。
ケチャップ好きはアメリカ人やで。
その3へ続く。
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