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『人生は、時々晴れ』

『人生は、時々晴れ』(原題:All or Nothing)
監督:マイク・リー
出演:ティモシー・スポール,レスリー・マンヴィル,
   アリソン・ガーランド,ルース・シーン他

いわゆる「台本」を用意せず、
俳優のアドリブにまかせて撮影することで有名なマイク・リー監督。
なりゆきまかせだなんて怠慢?
同監督の『秘密と嘘』(1996)や、
邦画では、「台本にセリフなし」で撮られた諏訪敦彦監督の『M/OTHER』(1999)など、
このスタイルが嫌いな人にとっては
ウザイ以外の何ものでもない作品でしょう。

フィルはタクシー運転手。
毎日の稼ぎは少ない。
内縁の妻ペニーは夫の稼ぎを埋めるべく、スーパーでレジ係のパート。
フィルにそっくりの太った娘と息子。
娘のレイチェルは老人ホームでまじめに勤務しているが、息子のローリーは無職。
ひたすら食べては、ペニーに反抗的な態度をとる。

フィルの同僚ロン。
しょっちゅうタクシーで事故を起こしている。
妻のキャロルはアル中。
娘のサマンサはそんな両親に愛想をつかし、街へ出かける毎日。

アイロンがけが仕事のモーリーン。
娘のドナとふたり暮らし。
つとめて会話を試みる母親だが、娘は常に母を遠ざける。

ロンドン郊外の集合住宅で暮らす、こんな3家族の日々のひとコマ。
世間一般で起こりそうなことを通して、家族のありかたを問われます。

台本なしのこの演出、好き嫌いはあるでしょうが、
人まかせで進められるこの演出は真実味があり、
グイグイと胸に迫ってきます。

稼ぎが少ないために居場所のないフィル。
ある日、無線も携帯も切って遠出をする気持ちは
世のお父さんたちはよくわかるかもしれません。
そして、そんなフィルの姿を見て、
料理、洗濯、買い物、子育てと休むひまなく働くペニーが
「私には切れるスイッチなんてないのに」と泣き叫ぶ気持ちに
お母さんたちは「そのとおり」と言いたくなるでしょう。

お互いに言いたいことを口に出さずに我慢してきた夫婦が
終盤、すべての思いを洗いざらいぶちまけて、
絆を修復していく過程は心を打たれます。
それを見守る子どもの姿も。

「車をぶつけられた」と憤るロンに、フィルが語るセリフ、
「もしその事故に遭わなかったら、次の角で子どもをひいていたかもしれない」。
これっていい考え方や!と思いました。

さて、あなたが役者なら、夫婦の会話はどんなふうになりますか。

人生は、時々晴れ。
この邦題(原題は“All or Nothing”)はなかなかいいですね。
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