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『モーヴァン』

『モーヴァン』(原題:Morvern Callar)
監督:リン・ラムジー
出演:サマンサ・モートン,キャサリン・マクダーモット,
   レイフ・パトリック・バーチェル,ダン・ケイダン他

原題は“Morvern Callar”。
これが主人公の若い女性の名前。
監督は若手の女性、原作はアラン・ウォーナーという男性です。

スコットランドの港町。
クリスマスの朝、モーヴァンが帰宅してみると、
キッチンで同棲中の恋人が倒れていた。
床には流れた血の跡。

パソコンには彼のメッセージが。
「ごめん、自殺は理屈じゃない。愛してる」。
そして、「僕の原稿を出版社に送ってほしい」と。
クリスマスツリーの横には彼からのプレゼント。
ジャケットと、ラベルに“Music For You”と書かれたカセットテープ。

モーヴァンは新しいジャケットをはおってクリスマスの街へ出る。
スーパーで一緒に働く親友ラナと、朝までドンチャン騒ぎ。
行く先々で「彼は?」と聞かれるが、事実を明かすことができない。

自宅でふたたびパソコンに向かう。
自分のために作られたテープを聞きながら、彼の原稿を開く。
著者の名前を“Morvern Callar”と書きかえ、ロンドンの出版社に送る。

やがて出版社から連絡が来る。
送った原稿を気に入って、契約してくれるらしい。

有頂天になるモーヴァン。
彼の口座からお金を引き出し、ラナを誘って旅に出る。

「ヘッドホンをすれば現実は夢になる」というのがキャッチコピー。
イギリスではモーヴァンと同世代の若者に支持されたようです。
街の喧噪が伝わってくる、派手だけど薄暗くザラっとした色。
それからこの作品になくてはならない音楽。

自殺した「彼」の顔は最初から最後まで映りません。
彼の死にとまどい、しばらくはどうすることもできないモーヴァン。
「彼」を残したまま街に出かけ、帰ってくれば「彼」の横で音楽を聴く。
キッチンとリビングのあいだに横たわる「彼」をまたいで
オーヴンにピザを入れにいく。
「彼」を風呂場へ運び、ヴェルベット・アンダーグラウンドの曲にのせて、
死体をギコギコ切り刻む。

セリフがあるわけでもなく、
こうした場面には似合わない、でもハマリまくった音楽とともに映し出されます。

生きることが好きだとも思えない主人公が
たまたま訪れた不幸を幸せに変えてしたたかに生きる姿。

「キッチン」と「リビング」が
「現実」と「夢」であるように思いました。
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