『ハウス・オブ・ダイナマイト』(原題:A House of Dynamite)
監督:キャスリン・ビグロー
出演:レベッカ・ファーガソン,ジェイソン・クラーク,アンソニー・ラモス,ガブリエル・バッソ,ジャレッド・ハリス,ケイトリン・デヴァー,トレイシー・レッツ,グレタ・リー,モーゼス・イングラム,ウィラ・フィッツジェラルド,ジョナ・ハウアー=キング,ブライアン・ティー,レネー・エリス・ゴールズベリー,イドリス・エルバ他
たまには配信で観た作品も挙げておきます。10月24日よりNetflixにて独占配信中。それに先駆けて10月10日から一部の劇場で公開していた折に観に行きたかったのですが時間つくれず。家で観る時間もないんだけどと思いながら、どうしても観たかったので時間をつくりました。つくれるものですねぇ(笑)。
監督は『ハート・ロッカー』(2008)や『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)のキャスリン・ビグロー。骨太の作品ばかりなので、男性だとばかり思い込んでいた時期があります。女性だと知ったときには驚きましたが、まだお若い人だと思っていたら今は70代半ばに差しかかっていらっしゃいます。こんな言い方はたいそう失礼かと思いますが、ババアがこんなの撮れるんだという驚き。すみません。尊敬しています。
出どころが不明のICBM(大陸間弾道ミサイル)がアメリカに向かって発射されたことがわかります。そのときそれぞれこんな3カ所にいたこんな人たちはどうしていたかという3部構成。
第1部『傾斜が水平に』。午前3時すぎ、海軍大佐オリヴィア・ウォーカー(レベッカ・ファーガソン)が発熱した娘を夫に託して出勤する先はホワイトハウスの危機管理室。当直チームから勤務を引き継ぎを済ませるが、午前9時半、北西太平洋上空を正体不明のICBMが飛行しているのを探知。このままだと18分後にシカゴに着弾するものと推定される。
ICBMが発射される前に時間は戻って第2部『弾丸で弾丸を撃つ』。国家安全保障問題担当大統領副補佐官のジェイク・バリントン(ガブリエル・バッソ)は、ICBMの飛行を知らされ、大統領(イドリス・エルバ)、国防長官リード・ベイカー(ジャレッド・ハリス)、米国戦略軍司令官の空軍大将アンソニー・ブレイディ(トレイシー・レッツ)らとのビデオ会議に出席する。
同じく時間が戻って第3部『爆薬が詰まった家』。少女たちのバスケットボールチームのイベントに出席中だった大統領は、ICBMが発射されたとの報告を受けて会場を出る。避難の途中、大統領に同行する報復戦略顧問兼大統領軍事顧問の海軍少佐ロバート・リーヴス(ジョナ・ハウアー=キング)から報復計画の選択肢を提示され、どうすべきか苦悩する大統領。
どの場面にもさまざまな人がいます。ICBMの発射を検知した空軍基地には妻から離婚を切り出されたばかりの少佐。オリヴィアの隣には今晩恋人にプロポーズしようと思っている部下。国防長官は妻の死のことで娘から疎まれていて、電話をかけてくるなと言われているけれど、そこから逃げるようにと伝えたい。ホワイトハウス担当のCNNの記者は何が起きているのか知りたい。大統領の妻は象の保護に関する問題でケニアに滞在中。
報復攻撃をしたのかどうか、私たちはわからないまま。そこが不満なのか、口コミを見ると評価はあまり高くないようですが、あなたならどの選択をしますかと問われているようで唸りました。「報復しないのは降伏するのと同じだ」と言う大統領に対して、「報復するのは自殺するのと同じです」というジェイクの言葉が耳に残っています。
『果てしなきスカーレット』
『果てしなきスカーレット』
監督:細田守
声の出演:芦田愛菜,岡田将生,山路和弘,柄本時生,青木崇高,染谷将太,白山乃愛,白石加代子,宮野真守,津田健次郎,羽佐間道夫,古川登志夫,吉田鋼太郎,斉藤由貴,松重豊,市村正親,役所広司他
NGKに行く前にTOHOシネマズなんばにて2本ハシゴの2本目。『サマーウォーズ』(2009)や『竜とそばかすの姫』(2021)の細田守監督が満を持して送る新作。シェイクスピアの『ハムレット』をモチーフとしています。時間的にちょうどよかったIMAX版を鑑賞しました。括弧内は声の担当者です。
中世のとある国。王アムレット(市村正親)の娘である王女スカーレット(芦田愛菜)は父親のことが大好き。争いを好まないアムレットは優しい王として民衆からも慕われていたが、隣国との揉め事を話し合いで解決しようとする姿勢を王の弟クローディアス(役所広司)は良しとしない。クローディアスの陰謀で反逆罪を着せられたアムレットは、スカーレットの目の前で処刑される。女王ガートルード(斉藤由貴)もあっという間に寝返ってクローディアスの妻となる。
復讐を誓うスカーレットがクローディアスを殺す機会を探るうち、逆にスカーレットが毒を盛られて意識を失う。目覚めるとそこは“死者の国”。年月を経てすでに亡くなっているクローディアスもこの国にいるらしい。砂漠を突き進みながらクローディアスの行方を探していたスカーレットは、現代からやって来た看護師の聖(岡田将生)と出会い、共に旅をするのだが……。
死してなお争う。この国にいるものはみんなすでに死んでいるというのに、クローディアスは今も王として君臨しています。スカーレットが敵討ちを画策しているという噂はすぐに駆け巡り、クローディアスの側近たちが次々とスカーレットを狙う。中にはアムレットを処刑したコーネリウス(松重豊)とポローニアス(山路和弘)もいて、スカーレットは彼らを殺そうとしますが、聖が許さない。負傷したふたりに手当てをしてやる始末で、スカーレットは呆れます。けれど、聖の馬鹿かと思うような優しさがスカーレットを救うことになります。
当然評価が高いだろうと思っていたら、けちょんけちょんに言われていて驚く。確かに『サマーウォーズ』と比べたらいたって「普通」で特に面白かったとは思いません。でもそんなに言われるほどは酷くない。だいたいこの俳優たちの声でアニメが観られるなんて、それだけで嬉しくなりませんか。まぁ、2回は観ないなぁ。てか、散々な叩かれ様で、まもなく上映が打ち切られてしまいそう。
この世界から戦争がなくなることを願って作られた作品であることは確かだと思います。
『ブラックフォン2』
『ブラックフォン2』(原題:Black Phone 2)
監督:スコット・デリクソン
出演:メイソン・テムズ,マデリーン・マックグロウ,ミゲル・モーラ,デミアン・ビチル,ジェレミー・デイヴィス,アリアーナ・リバス,マエフ・ビーティ,グレアム・アビー,アナ・ローア,イーサン・ホーク他
吉本新喜劇を観る前にTOHOシネマズなんばにて2本。その1本目は『ブラック・フォン』(2021)の続編。それほど客が入っていた記憶はないので、続編を製作するほどヒットしたのかと驚きました。監督は前作に引き続きスコット・デリクソン。前作でイーサン・ホーク演じる連続殺人鬼に誘拐された少年たちのうち、唯一生還した少年をそのままメイソン・テムズが演じています。
連続殺人鬼グラバーに誘拐された少年フィニーが生還したのは4年前のこと。フィニーは監禁されていた部屋にあった不思議な黒電話を通じて、殺された少年たちからアドバイスを受けたおかげでグラバーを殺害して脱出することができたのだ。しかし、高校生になった今もあのときの恐怖は消えず、かといってそれを言ったところで周囲にわかってもらえるはずもない。殺人鬼を倒した少年としてからかわれるとつい喧嘩してしまい、友だちはひとりもいない。
一方、フィニーの妹グウェンもまた、フィニーが監禁されていた場所を夢で見て当てた少女として有名に。そのせいで学校で魔女などと揶揄されている。そんなグウェンに想いを寄せるアーネストは、グラバーに殺された少年ロビンの弟。フィニーが生還できたのはロビンのおかげでもあるのだが、妹に言い寄るアーネストを好意的な目では見られないフィニー。
ある日、亡き母ホープから電話がかかってくる夢を見たグウェン。以降悪夢にうなされるようになり、これはただの夢ではないと思いはじめる。父テレンスと結婚する前のホープがアルパイン湖畔のキリスト教系キャンプでカウンセラーをしていたことを知ったグウェンは、謎を解き明かすためにアーネストと共にキャンプへ乗り込むことに。アーネストだけに任せるわけにはいかないと、フィニーも一緒に向かうのだが……。
湖畔のキャンプといえばなんとなく夏ですが、彼らが訪れるのは冬。キャンプ参加者の世話をするという建前だったのに、大雪で道という道が閉ざされます。参加者のみならずカウンセラーもわんさか来るはずだったキャンプ自体が中止になり、それを知らずにやってきたフィニーら3人と、ここで暮らす経営者のアルマンドとその姪マスタング、職員のケネスとバーバラのみが滞在中。
続編のほうが面白さが下がる場合が多いけれど、これは続編のほうが断然面白い。グラバーは死んだはずなのにその魂は残っていて、フィニーやグウェンを苦しめ続けます。なぜ魂が残っていられるのかというと、少年たちが恐怖に震える気持ちがグラバーの糧になっている。ちょっと無茶な設定だとは思いますが(笑)、未発見の少年たちの遺体を見つけることができたら、そのときがグラバーが本当に死ぬとき。死んでからもグラバーに怯えることを余儀なくされている少年たちは、自分たちの遺体を見つけて成仏させてほしいと、フィニーとグウェンに助けを求めているのですね。
子どもたちの前では明るく振る舞っていても、妻を自死させてしまったと悔いるテレンス(ジェレミー・デイヴィス)。一旦閉鎖されたキャンプを自ら買い取って少年たちの遺体を必ず見つけると遺族に約束して頑張ってきたアルマンド(デミアン・ビチル)。おっちゃんたちがいい味を出しています。あと、マスタング役のアリアーナ・リバスが美人♪
これでホンマに死んだやろ、グラバー。また復活とかやめてやとエンドロールが終わるまで見守りました。続編はないみたい。よかった(笑)。
『映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ』
『映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ』
監督:イワタナオミ
ナレーション:井ノ原快彦,本上まなみ
キノシネマ神戸国際にて2本ハシゴの2本目。前述の『金髪』の後に。
わざわざこんな子ども向けアニメを観なくてもいいでしょうと思うけれど、『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺダンシングPARTY』よりはターゲットの年齢が上だ。それに“すみっコぐらし”は亡くなった弟がオンクレでグッズをいろいろ釣り上げていた思い出のシリーズでもあるから、上映時間さえ合えば観たいと思っていました。劇場版の第4弾。監督は『映画 ざんねんないきもの事典』(2022)のイワタナオミ。
このところ雨続きだったすみっコの町に、空の王国から“おうじ”と“おつきのコ”がやって来る。おうじによれば空の王国は深刻な水不足に悩まされており、その解決策を求めておうじはすみっコの街を訪れたらしい。すみっコたちは協力することに決め、おうじとおつきのコと共に大冒険へと繰り出す。
私以外の客は家族連ればかりです。お母さん、あるいはおばあちゃんが小さい子を連れて。あるいはお父さんとお母さんと子どもとか。『シナぷしゅ』のときのように場内が点灯したままではないけれど、すぐにトイレに行けるようにドアは開放されています。どの子も凄く楽しそうで、私の前席の子なんかずっと踊っていました。
誰が思いついたんだか、すみっコたちのキャラクターは面白い。エビフライドンなんて笑っちゃいますよね。丼じゃないですよ、揚げ物怪獣という設定の恐竜みたいな飛べるやつ。急流に落ちたおうじとおつきのコを救うために水に飛び込んだら衣がぼろぼろ剥げてゆく。頑張れ〜と声援を送りたくなる。
たまにはこんなのを観るのもよいかなと思う。
『金髪』
『金髪』
監督:坂下雄一郎
出演:岩田剛典,白鳥玉季,門脇麦,山田真歩,田村健太郎,内田慈他
夕刻から神戸の日本料理店でジャズ懐石。その前にキノシネマ神戸国際にて2本ハシゴの1本目。
原作があるのかと思っていたら、坂下雄一郎監督のオリジナル脚本らしい。本作の公開に先駆けてノベライズ本が出版されています。ノベライズにはそもそも期待していないので、これも今から手に取ることはないと思います。書店で見つけてもしも薄ければ買うかもしれません(笑)。
中学校教師・市川健太(岩田剛典)が担任を務めるクラスで事件が発生。クラスのほとんどの生徒が髪を金色に染めて登校してきたのだ。誰が主導しているのかは生徒たち自身もわからないようで、そんな話が回ってきたから面白そうだと思って乗ったとのこと。きっかけとなったのはおそらく生徒の地毛が明るい茶色だったにもかかわらず校則違反とされて黒に染めさせられたことだろう。そのせいで彼女は不登校になった。この件に反発したのだという想像はつくが、その生徒は市川のクラスの生徒ではない。よりによってどうしてウチのクラスの生徒たちが金髪にするんだよと理不尽に思う市川。
鬱々としながらも態度には表さずに帰宅し、マッチングアプリで出会って交際中の赤坂美咲(門脇麦)と食事をしていると、美咲からいきなり結婚についてどう考えているかを問われる。結婚のことはまったく頭の中になかったから、急な話に呆然。しかし美咲も結婚したくてその話を持ち出したわけではないらしくホッ。
翌日、大半の生徒は髪を黒く染め直して登校してきたが、女子生徒・板緑(白鳥玉季)を含む何人かは頑なに金髪のまま。板緑はおよそこんなことはしそうにもないタイプだと思われていたのに、実は彼女こそが発起人だとわかる。やがて“金髪デモ”を知ったマスコミが学校に押し寄せ、SNSでも拡散されてしまい……。
健太は熱血教師でも何でもありません。彼が生徒に向けて発する言葉も会議などにおける発言もただただ薄っぺらい。実のあることは何にも言えないくせに、家では愚痴ばかりこぼして悪態をつきます。自分に味方してもらうつもりで美咲に意見を求めると、ズバッと痛いところを突かれる。カッコイイ岩ちゃんを情けなくて冴えない健太に配したキャストは面白い。
「これは事件の話ではなくて僕自身の話」という台詞のとおり、金髪事件の話というよりは、オジサン化している自分を認められない男の話です。年齢を言ったときに「見えない〜」と言ってほしかったり、若い子に理解のある大人だと思ってほしかったり、健太以上の年齢の人であれば男性でも女性でも「うわっ、これ私」と苦笑いしてしまうシーンがあるかもしれません。
健太と板緑が密談の場に選ぶのが映画館というのは感心しない(笑)。あんな大声で話されたりスマホを使われたりって最悪だ。映画の中の話とはいえ、これはやめてほしかった。





