『ハンサム・ガイズ』(英題:Handsome Guys)
監督:ナム・ドンヒョプ
出演:イ・ソンミン,イ・ヒジュン,コン・スンヨン,チャン・ドンジュ,キム・ドフン,ビン・チャンウク,カン・ギドゥン,イ・ギュヒョン,パク・ジファン,ウ・ヒョン他
なんばパークスシネマにて、前述の『アフター・ザ・クエイク』の次に。『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』(2010)を韓国でリメイクするなんて、誰が予想したでしょう。めちゃくちゃ面白かった。
中年男のジェピル(イ・ソンミン)と彼を兄貴と慕うサング(イ・ヒジュン)は田舎暮らしに憧れて、このたび念願の山小屋を購入する。この山小屋の持ち主である神父(ウ・ヒョン)は長らく入院中でもう目覚める気配がないため、売りに出されたらしい。写真で見たのとは違うボロさにジェピルはドン引きするが、サングは大喜び。愛犬のボングも嬉しそうに駆け回る。
ちょうど同時期にその近くに遊びに来ていたボンボン大学生♂3人と♀2人。内ひとりの女子大生ミナ(コン・スンヨン)は、狙っていた男子ソンビン(チャン・ドンジュ)が自分の悪口を言っているのを耳にする。ショックで宿泊先を飛び出したところ、池に落ちてしまう。夜釣りをしにきていたジェピルとサングが溺れるミナを救うが、ミナは自分が気を失っている間に助けてもらったとも知らずに、オッサンたちに襲われると思い込んで逃げ出す。再び転倒して失神し、運び込まれた山小屋で目覚めてしばらく後、自分がとんだ勘違いをしていたことに気づく。
ミナが帰ってこないのは往路のスーパーで見かけたオッサンたちに捕まったからに違いない。奴らはきっと殺人鬼だと考えたソンビンたちは、ミナを探しに山小屋へ。ミナを心配してのことではなく、ミナに貸した上着に入れたままのスマホを返してもらわないと困るからだ。
おびえながらも山小屋へたどり着いたソンビン、ジェイソン(キム・ドフン)、ヨンジュン(ビン・チャンウク)とその彼女でミナの親友ボラ(パク・ジョンファ)、「先輩」とは名ばかりでソンビンから雑用係に使われているビョンジョ(カン・ギドゥン)は、ちょうどスズメバチと格闘中だったジェピルに驚いて逃げる。その途中、ボラは不運にも死亡。ボラも奴らに殺されたと信じて疑わないソンビンらは、ビョンジョに通報するように言いつける。
前日に山小屋へ向かうジェピルとサングを怪しんでいた警官チェ(パク・ジファン)とその部下のドンユン(イ・ギュヒョン)は、命からがら逃げてきたビョンジョから事情を聴き、すぐさま山小屋へと向かい……。
たいしたイケメンでもないのに金があるから偉そうなソンビンたちを見て、最初は嫌な感じ。ビョンジョだけはちょっと気の毒ですが、性格が歪んでいます(笑)。こいつら早く不幸な目に遭えと思っていたら、みんな死ぬ死ぬ。それ以上にむかつく警官チェもいい気味です。部下で気弱なイケメンのドンユンだけは助かってほしいと願う。怖いよ、悪魔が憑依した黒山羊(笑)。
根っから善人のジェピルとサングなのに、見た目のせいですぐに誤解されてしまいます。本人たちは何もしていないのに、周りが勝手に騒いで転んで事故に遭う。あまりに悲惨な状況に声を出して笑いました。オリジナルも面白かったけど、私はこのリメイク版がとても好き。愛すべきオッサン。後味も良くてオススメのコメディホラーです。
『アフター・ザ・クエイク』
『アフター・ザ・クエイク』
監督:井上剛
出演:岡田将生,橋本愛,吹越満,泉澤祐希,北香那,唐田えりか,鳴海唯,黒崎煌代,堤真一,渡辺大知,黒川想矢,井川遥,渋川清彦,津田寛治,錦戸亮,佐藤浩市他
声の出演:のん
仕事帰りになんばパークスシネマにて。18:00からの上映に間に合うかどうかは新御がどれくらい混んでいるかによるのでドキドキします。この日は余裕で間に合いました。
村上春樹の短編集『神の⼦どもたちはみな踊る』に収録されている6つの短編のうち4つがベース。2000年に月刊誌『新潮』で連載されたときは副題として「地震のあとで」が付いていたそうです。つまりこれが本作のタイトルとなっています。NHKで全4回に渡って放映されたドラマのタイトルも『地震のあとで』で、これはその劇場版。ベースとなっている短編が『めくらやなぎと眠る女』(2022)とかぶるので、既視感に浸りながらの鑑賞。第何章と表示されるわけではないけれど、オムニバスというのか連作というのか。
第1章の基は『UFOが釧路に降りる』で、1995年が舞台。オーディオ機器専門店に勤める小村徹(岡田将生)。1月17日に阪神・淡路大震災が発生してからというもの、妻の未名(橋本愛)は食事もろくに摂らずにひたすらニュース映像を見続けていたかと思うと、書き置きを残して突然出て行ってしまう。長期休暇を取ることにした徹は、後輩社員(泉澤祐希)から「妹のケイコ(北香那)に届けてほしい」と箱を預かり、北海道へ。釧路空港でケイコとその友人のシマオ(唐田えりか)に出迎えられる。
第2章の基は『アイロンのある風景』で、2011年が舞台。高校生だった2年前に家出して茨城県の海辺の町にたどり着いた順子(鳴海唯)は、勤め先のコンビニに毎日やってくる客の三宅(堤真一)が流木を集めて夜中に焚き火しているのを見かける。以降、たびたび同棲中の彼氏(黒崎煌代)と共に焚き火に寄っては三宅と言葉を交わすようになる。
第3章の基は表題作の『神の⼦どもたちはみな踊る』で、2020年が舞台。カルト教団の信者である母親(井川遥)のもとで“神の子ども”として育てられた善也(黒川想矢)は、2011年の東日本大震災を機に信仰を捨てた。大人になった彼(渡辺大知)は、病に倒れた教団幹部の田端(渋川清彦)から最期に会いたいと言われて出向く。
第4章は『かえるくん、東京を救う』で、2025年が舞台。かつて信用金庫に勤めていた片桐(佐藤浩市)は今はネットカフェ暮らしの警備員。ある日、彼の前に巨大な蛙の姿をして人間の言葉をしゃべるかえるくん(声:のん)が現れる。かえるくんが言うには、30年前に片桐とかえるくんは協力して東京を救った、再び助けてほしいと。
ね、へんてこな話ですよね。学生の頃、村上春樹が大好きだったのですが、今こうして書いてみると、はたしてあの頃の私に彼の作品が理解できていたのかどうかわかりません。理解できていたとは思えないけれど、なんとなく面白かったのかなと。震災に寄せた話には少し苦手意識がありますが、こんなふうになるとやっぱり村上春樹って凄いなと思うのです。偽善的な雰囲気がいっさいなく、ただ、震災後の人々の気持ちの変化を紡いでいるようで、押しつけがましくない。とはいうものの難解。何度か観たら何が言いたいのか私にもわかるでしょうか。非常に魅力的な出演陣です。
『ワン・バトル・アフター・アナザー』
『ワン・バトル・アフター・アナザー』(原題:One Battle After Another)
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:レオナルド・ディカプリオ,ショーン・ペン,ベニチオ・デル・トロ,レジーナ・ホール,テヤナ・テイラー,チェイス・インフィニティ,ウッド・ハリス,アラナ・ハイム,シェイナ・マクヘイル,ポール・グリムスタッド,トニー・ゴールドウィン,スターレッタ・デュポワ他
声の出演:ジェナ・マローン
ポール・トーマス・アンダーソン監督は『ブギーナイツ』(1997)で時の人となり、『マグノリア』(1999)でさらに高い評価を得ました。その後も多作とは言えないもののコンスタントに撮りつづけ、世に送り出すたびに絶賛される。『パンチドランク・ラブ』(2002)なんかは懐かしい。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)は主演のダニエル・デイ=ルイスがあまり得意ではないため、私はハマらなかったけど、彼を再び主演に起用した『ファントム・スレッド』(2017)は凄く面白かった。そんなアンダーソン監督がレオナルド・ディカプリオを主演に迎えたのが本作。109シネマズ箕面にて、上映終了は23:55の回でしたが、わりと客が入っていました。
頼りない中年男性パットは、イケイケの逞しい女性パーフィディアに引きずられるように極左革命グループ“フレンチ75”に参加し、カリフォルニアの収容所から不法滞在の移民を救出することに成功。その過程でパーフィディアは収容所の指揮官を務める軍人ロックジョーに屈辱的な思いをさせる。それを恨みに思うロックジョーは、パーフィディアを偏愛するようになる。ロックジョーはパーフィディアの動きを監視し、彼女の爆弾設置現場を捉えるや脅して性的関係を持つ。
そうとは知らないパットはパーフィディアと結婚し、一人娘のシャーリーンを授かる。ところが母親になりきれないパーフィディアは革命家としての人生を優先。シャーリーンをパットひとりに押しつけて家を出て行ってしまう。その後、銀行を襲ったパーフィディアは警備員を射殺。ロックジョーに捕まると証人保護プログラムの適用を受け入れて、フレンチ75のメンバーの名前をすべて吐いて裏切り者となる。すっかりロックジョーに囚われていた彼女だが、やがてメキシコへと逃亡。
16年後、パットはボブを名乗り、娘のシャーリーンの名前もウィラに変えて普通の生活を心がけていた。しかしいつ何時刺客に見つかるかわからず、高校生となったウィラにはスマホの使用を禁じ、密やかな日々を送っている。反移民政策を唱えて警視に昇進したロックジョーは、なんとしてでもパーフィディアの夫と娘を見つけるべく部下たちを使って探し回るのだが……。
ベニチオ・デル・トロが出演しているせいで、この数日前に観た『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』とイメージがかぶります。予告編なんて、音楽も同じような感じに思えて、ポール・トーマス・アンダーソン監督がウェス・アンダーソン監督化していると思いました(笑)。本編を観たらそんなことはなく。小難しい話を予想していたら、意外にもわかりやすい。
このベニチオ・デル・トロの役が良いんです。麻薬王の役なんかも多い彼ですが、本作ではウィラの空手の先生。さらわれたウィラを早く追いかけたいのにロックジョーから追われるボブを全力で助けようとします。ショーン・ペンはよくもこんな変態役を引き受けたと思うほどの気持ち悪さ。KKKのごとき白人至上主義の秘密結社の存在も不気味極まりありません。地獄に堕ちろ、ロックジョー。
パーフィディアにはまったく同情できず。自分で産んだ娘なのに夫が可愛がると嫉妬して、革命運動したいんだと出て行く。こうなると、何のための革命なんだかわからない。移民を解放して世の中に正義をと謳っていても、さっさと自分の娘を捨てての行動ですから。
実はウィラがボブの子ではなくロックジョーの娘だということは誰しも観ていてわかることだと思います。そんなことに関係なく、ウィラを助けるべく奔走するボブがカッコイイ。昔の美しいディカプリオはもういないけど(笑)、彼はやっぱり演技が上手いですね。面白かったけど、長いなぁ。162分。
『2016 BTS Live 花樣年華 On Stage : Epilogue』【4Kリマスター特別編集版】
“BTS MOVIE WEEKS”と銘打たれ、BTSのライブ映像4つが4週にわたって公開。その1つめがこの『2016 BTS Live 花樣年華 On Stage : Epilogue』。109シネマズ箕面で鑑賞。応援上映です。
1ミリの興味もなかったK-POP。それがほぼ1年前に『JUNG KOOK: I AM STILL』にどハマりし、結局8回観ました。1ミリの興味もなかったといっても、観なきゃ文句も言えないから、それ以前には観るものがなくなったときにちゃんとK-POPグループのドキュメンタリー映像なんかは観ていましたし、BTSだって何度も観ていたのに、文句もないけどどうでもいい感じで全然ハマらず。だから『JUNG KOOK: I AM STILL』でまさに沼状態に陥ったときは、どうなっているんだ私!?と思いました(笑)。
本作はタイトルどおり2016年のライブ映像。当然その頃は私はBTSはおろかK-POPをまったく聴いていません。でも『JUNG KOOK: I AM STILL』をくりかえし観たいがためにDisney+を契約したため、このライブも東京公演版を自宅で観ました。今回劇場公開されたのはソウル公演版だから初めて観ます。新鮮。メンバーみんなやっぱりちょっと若い。ジョングクの髪型はソウルより東京のときのほうが好きだな。今は完全に箱推しとはいうものの、ジョングクについつい目が行くのは致し方なし。
客はおそらく私と同年代の女性が圧倒的に多い。数日前に予約したときはエグゼクティブシートが埋まっているだけだったのに、思いのほかたくさんの客。杖を突いた高齢の女性などもお見かけ、うわぁ、アーミー凄いと感激。『BTS ARMY:FOREVER WE ARE YOUNG』を思い出します。「私たちは永遠にあなたの観客でありつづける」は本当だと思いました。これを書きながら東京版を背中越しに聴いています。4つ全部観に行く。
『劇場版総集編 ガールズバンドクライ 前編 青春狂走曲』
『劇場版総集編 ガールズバンドクライ 前編 青春狂走曲』
監督:酒井和男
声の出演:理名,夕莉,美怜,凪都,朱李,近藤玲奈,あんどうさくら,幸田直子,平田広明,沢城みゆき他
全然知らないアニメだけど、行けば来場者特典がもらえるんじゃないかしらと期待して公開初日に行きました。もらえました。自分で集めているいるわけではありません。メルカリしている姐さんに託して、姐さんと遊ぶときの資金としています。前述の『プロセキューター』の次に、同じく109シネマズ大阪エキスポシティにて。
昨年4月から6月にかけてテレビ放送されたメディアミックス作品なのだそうです。「東映アニメーション制作のTVアニメとagehaspringsの手掛ける5人組ガールズバンド“トゲナシトゲアリ”が連動するプロジェクト」と言われても、相変わらず私はそもそもメディアミックス作品とはどういうものなのかがピンと来ちゃいないのですが、あっちもこっちも同時進行する話と思っていいのですかね。若干ちがう気がする。こんなふうにまるでわかっていなくても音楽好きなら楽しめる話です。何の前知識もなく書いていますので、下記あらすじに誤りがあったらお許しを。
高校でいじめに遭って不登校に陥った仁菜は学校を辞め、熊本から単身で上京。教師の職業に就く父親が体裁を気にしてわが子の不登校を許せず、ずいぶんと罵倒された。高校を中退しても大学に入りさえすればいいんでしょ、ならば私は自力で大学に入ると息巻いて上京したものの右も左もわからない。契約していたアパートにようやくたどり着いたのは夜も遅くなってからで、鍵をもらう予定だった不動産屋は本日の営業終了。とりあえず夜を明かさねばと思っていたとき、あるミュージシャンの路上ライブに出くわす。
そのミュージシャンはもともと仁菜が大好きだったガールズバンド“ダイヤモンドダスト”を脱退したギタリスト桃香。辛かったときに桃香が作った曲を聴いて衝撃を受けた仁菜は、桃香の演奏終了を待って思わず駆け寄る。桃香は仁菜を食事に連れて行き、自宅に泊まらせることに。話は弾むが、桃香が自作の曲の権利をダイヤモンドダストに譲渡したことについて仁菜からとやかく言われて口をつぐむ。その翌朝、桃香が音楽をあきらめて北海道に帰ると知り、仁菜はビックリ。大学受験に向けて予備校で頑張るつもりの仁菜だったが、桃香に音楽をやめてほしくない。帰郷しようとする桃香を追いかけ、とどまってくれるように叫ぶ。
桃香の決心を翻すことに成功はしたものの、そのときに仁菜の歌声を聴いた桃香は、一緒にバンドをやろうと仁菜を誘う。戸惑いつつも頷かざるを得なくなる仁菜。後日、桃香が連れてきたドラマーのすばるを紹介されるのだが……。
楽しかったです。“ぼっち・ざ・ろっく!”シリーズといい、バンドの話は楽しいですね。
仁菜の家庭環境はかなり複雑なもの。虐待に遭っているなどではないけれど、厳格な父親のもと、いくつかの家訓が掲げられている家庭です。そのうちのひとつが「夕食は必ず家族4人そろって摂ること」だから、仁菜は外食などほとんどしたことがありません。桃香に連れて行ってもらった店で生まれて初めて牛丼を食べて目からウロコ。一方のすばるはアクターズスクールに通うお嬢様ではありますが、祖母が現役の名女優だという呪縛がある。世渡りは上手くとも心中はいつももやもや。それぞれ人に触れられたくないような部分があり、でも誰かに聴いてほしい気もしています。
最初はスリーピースバンド。途中から牛丼屋の店員で実はバンドをやっている2人、智とルパが加わります。この2人も元は別の2人とバンドを組んでいたのに決裂。キーボードとベースでどうしたものかと思っているときに、客の桃香たちの会話を耳にしてこの3人となら上手くやれそうじゃないかと思う。キャラがみんな違って面白い。前編は仁菜が予備校を辞めてバンド活動に専念と宣言するところで終了。なにしろダイヤモンドダストの桃香の後任が仁菜をいじめていた奴ですから、多少ドロドロした展開になるのでしょうか。
このタイトルを聞いてすぐに思いつくのは『ボーイズ・ドント・クライ』(1999)。もちろん何の関係もないけれど、“Cry”と付けばたいてい“Don’t Cry”。そうだ、「叫ばない」じゃない。バンドは叫べ。