『エターナル・サンシャイン』(原題:Eternal Sunshine of the Spotless Mind)
監督:ミシェル・ゴンドリー
出演:ジム・キャリー,ケイト・ウィンスレット,キルステン・ダンスト,マーク・ラファロ,イライジャ・ウッド,トム・ウィルキンソン,ジェリー・ロバート・バーン,トーマス・ジェイ・ライアン,ジェーン・アダムス,デヴィッド・クロス他
イオンシネマ茨木にて、2004年のアメリカ作品を再上映中。同年の第77回アカデミー賞では脚本賞を受賞。同部門のノミネート作品は、『アビエイター』、『ホテル・ルワンダ』、『Mr.インクレディブル』、『ヴェラ・ドレイク』でした。2016年のイギリスBBC主催の「21世紀の偉大な映画ベスト100」では世界177人の批評家によって第6位に選出されたそうです。監督はミシェル・ゴンドリー、脚本は『マルコヴィッチの穴』(1999)のチャーリー・カウフマンが担当。主演は『マスク』(1994)のジム・キャリーと『タイタニック』(1997)のケイト・ウィンスレット。ジム・キャリーといえば変顔の人みたいなイメージがあったので、本作のような笑いの一切ないシリアスな作品の真面目な役は意外でした。
交際中だったジョエルとクレメンタインはバレンタインデーを前に喧嘩して険悪な雰囲気に陥る。仲直りをしようとプレゼントを携えてクレメンタインの勤務先の書店へと向かったジョエル。ところが彼の顔を見てもクレメンタインはまるで知らない人のような素振り。それどころか新しい恋人がいるようだ。傷心のジョエルは、クレメンタインがジョエルの記憶をすべて消し去る手術を受けたことを知る。このままでは立ち直れそうにもなく、ジョエルもクレメンタインの記憶を消去すると決意。施術をおこなうラクーナ社を訪れるのだが……。
以前には書いていないはずだと思ってこうして書いていたわけですが、2005年に書いてるやん私。あまり印象に残っていませんでしたが、いま観るとちょっと違う感じです。記憶を消すと決めたのに、施術の最中にもがき苦しむジョエル。どんなに辛くとも思い出は美しい。彼女との出会い、笑いの絶えなかった日々、喧嘩もしたけれど彼女のことが大好きだった。この思い出だけは残してくれと叫びたいのに叫べない。切ないです。
最後は憎み合って別れたとしても、今はふたりお互いのことを思い合っている。ならばたとえこの先どうなったとしてもそれはそれでいいじゃないか。いつか嫌いになることを前提にした恋なんてできません。
この頃はまだ若手だったキルステン・ダンストとマーク・ラファロとイライジャ・ウッドがラクーナ社のスタッフ役。社長役は一昨年他界したトム・ウィルキンソン。そんな顔ぶれもなんだか感慨深い1本でした。
『シャドウズ・エッジ』
『シャドウズ・エッジ』(原題:捕風追影)
監督:ラリー・ヤン
出演:ジャッキー・チェン,チャン・ツィフォン,レオン・カーフェイ,ツーシャー,ジュン,ジョウ・ジェンジエ,ワン・ジーイー,ラン・ユェティン,チェイニー・リン他
109シネマズ大阪エキスポシティにて前述の『悪魔祓い株式会社』とどれをハシゴするか悩み、1時間空くけれど終映時間が24:00の本作を選択。だってこんなの翌日が休みの日に観ないとしんどいもん。
「体を張った本格アクションからは引退」とジャッキー・チェンが宣言したのは『ライジング・ドラゴン』(2012)のときのこと。あれから13年も経つのに、まだやってるやんジャッキー。それともこれは本格アクションではないとでも言うのでしょうか。トム・クルーズよりさらに8つ上の来年72歳。凄いなぁ。監督は『ライド・オン』(2023)のラリー・ヤンが務めています。
犯罪捜査にAIが多用されるようになった現在だが、AIをいとも簡単に欺くサイバー犯罪集団が暗躍。追跡中に必ず逃げられて打つ手に困るマカオ警察は、ベテランのホワン・ダージョンを呼び戻すことに。ホワンは追跡のエキスパートで伝説の刑事ではあるものの、一線を退いて久しい。この時代に化石に頼むなんてと皮肉を言う中堅刑事もいるが、呼び戻してみればホワンの洞察力はちっとも衰えていないどころか、誰も気づかなかった点を次々と挙げてみせる。異議を唱える者はいなくなり、ホワンをリーダーに追跡チームが復活する。
追跡チームに加わることを希望する刑事は大勢。ホワンはそのうち追跡者としての適性ありと見抜いた者をチームに抜擢。ひとりはかつてのホワンの相棒だった刑事の娘ホー・チウグオ。小柄な若い女性であるがゆえに、同僚の男性刑事からは舐めた発言もされていたが、格闘の術はたいしたもの。広報用に据えられただけだと嫌味を言ってきた先輩刑事を伸してみせるほど。ホワンはそんなホーを頼もしく思いながら、自分と同じ追跡車にホーも乗せる。
追跡開始から数週間経過した頃、やっとそれらしき人物を市場内で発見。彼の正体は“影”と呼ばれていた凄腕の元諜報員のフー・ロンション。フーがサイバー犯罪集団を率いて強盗の司令塔となっていることを突き止め、追跡を開始するのだが……。
冒頭の強盗シーンに出てくる敵チームが男前ぞろいのうえにパルクール張りのアクションを見せてくれて目が釘付け。誰なのこのイケメンたちはと思ったら、金城武似の中国人俳優がツーシャーで双子をひとりで演じ分けています。もうひとりのイケメンはSEVENTEENのジュン。道理でカワイイ。フー演じていたのがレオン・カーフェイとは気づかなくて、後から知って驚きました。よく見りゃそうだけど、ウォン・カーウァイ作品に出ていた頃の彼しか知らないから、こんなジジイになっているとは。
イケメン犯罪集団は児童養護施設育ち。彼らが父親のように慕っていたのがフーで、「親父」と呼ぶ。親父に一流の犯罪者として育て上げられるも、身内であっても裏切れば容赦なく殺すという掟があるのですね。そこはちょっと切ないところ。このフーが強すぎて笑っちゃうほど。切られても突き刺されても死なんのだから、話が終わらん(笑)。一方のホワンも首を掻き切られても「傷はそんなに深くない」とか言うんだから、ジジイらみんな不死身かよ。
そしてこれも続編があるっぽい。ジャッキー作品おきまりのNGシーンてんこ盛りのエンドロールでは「あと20年生きてください」と言われて「それは酷いだろ」と答えていました(笑)。これからもキレッキレのアクションを見せてほしいような、あまり無理はしないでほしいような。
『悪魔祓い株式会社』
『悪魔祓い株式会社』(英題:Holy Night: Demon Hunters)
監督:イム・デヒ
出演:マ・ドンソク,ソヒョン,イ・デヴィッド,キョン・スジン,チョン・ジソ他
同週公開作品のうち何をおいても優先すべきはマ・ドンソク主演作品。本作では企画と原案も彼が務めているそうで、とにかく早く観に行かねばと心を躍らせて109シネマズ大阪エキスポシティへ。
“悪魔祓い株式会社”は、社長のバウ(マ・ドンソク)、エクソシスト(=悪魔祓い師)のシャロン(ソヒョン)、情報収集係のキム(イ・デヴィッド)から成る。巷では悪魔に取り憑かれたとおぼしき人々による事件が頻発。悪魔崇拝のカルト教団が絡んでいるようだが、事態を収められない警察がこっそり訪れて解決を依頼に来ることもしょっちゅうある。
そんな悪魔祓い株式会社へ意を決してやってきた女性ジョンウォン(キョン・スジン)。たったひとりの身内である彼女の妹ウンソ(チョン・ジソ)が異常行動を繰り返しているらしく、助けてほしいと。紹介者は警察ではなくマルコ神父だと知ったバウは、依頼を拒絶。バウとマルコ神父の間には確執があるのだ。バウが「妹をここではなく病院に連れて行け」と言い放つと、ジョンウォンこそが神経精神科医で、ウンソはすでに入院中とのこと。
ジョンウォンの力になりたいと考えたシャロンとキムがジョンウォンから預かった映像を確認しようとすると、気持ちを翻したバウも同席。ウンソには間違いなく最恐の悪魔が取り憑いているとわかり、病院から自宅に連れ帰って悪魔祓いをおこなうことにするのだが……。
凄く期待して観に行ったのに、なんだかなぁ。長尺作品が増えるなか、92分というのはコンパクトでいいとは思うのですが、もう少し背景を書き込んでくれてもよかったのではないでしょうか。あまりに大雑把なので、台詞の端々から想像するしかなくて。推察の域を出ませんが、バウ自身が児童養護施設に育ち、そのときに彼と最も親しかったジョセフという少年が実は悪魔の子。そうとも知らず、喧嘩に強いバウはジョセフを守り続けていたのに、あるときジョセフが悪魔を召喚して施設にいた者を皆殺しに。バウだけが奇跡的に生き延びますが、ほかの子どもたちを救えなかったバウは後悔の念から悪魔祓い株式会社を設立した模様。ジョセフを育てたマルコ神父のことを恨んでいるようです。悪魔と対戦中のバウの目が時折「悪魔的」に光る理由は明かされないままだから、「はぁ?」というシーンがいくつもある。笑えるシーンは極少で、ドンソク出演作品らしくない。
韓国の憑依もの(などというジャンルがあるのかどうか知らんけど)なら『憑依』(2023)のほうがずっと面白かった。ドンソク兄貴は今後俳優に徹してくださいという感想になりました。ドンソク兄貴を観るなら“犯罪都市”シリーズにしましょう。だけどこれ、続編があるふうな終わり方。ヒットを見込んで最初からそのつもりだったのかしら。あれば観るけど。観るんかいっ!
『ペンギン・レッスン』
『ペンギン・レッスン』(原題:The Penguin Lessons)
監督:ピーター・カッタネオ
出演:スティーヴ・クーガン,ビビアン・エル・ハベル,ビョルン・グスタフソン,ダビド・エレーロ,アルフォンシナ・カロシオ,ミカエラ・ブレッキ,ジョナサン・プライス他
なんばパークスシネマにて、『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』→『WEAPONS/ウェポンズ』→『仮面ライダーガヴ ギルティ・パルフェ』→本作。2本目とこの4本目は北摂の劇場では観られないからこれらがお目当てでした。『フル・モンティ』(1997)のピーター・カッタネオ監督によるスペイン/イギリス作品。冒険好きの教師トム・ミッチェルの回顧録『人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日』の映画化で、主演はコンスタントに映画に出続けて今年還暦のスティーヴ・クーガン。いつまでも元気でいてほしい俳優のうちのひとりです。
1970年代、軍事政権下のアルゼンチン。シカゴ、ベネズエラ、ブラジルなどを渡り歩いていたトムは、名門男子校セントジョージズカレッジに英語教師として赴任する。生徒は富裕層のぼんぼんばかりで、ろくに授業を聴こうとしない。どうしたものかと半ばあきらめ気分でいたところ、市内各地で起きている爆撃がおさまるまで1週間の休校が決定する。1週間の休暇があるならばと、ウルグアイでくつろぐことにしたトム。時間を持て余している同僚の理科教師タピオもついてくる。
ウルグアイのダンスクラブに出向いたトムは、カリナという女性から逆ナンパされるが、ふたりで海岸を歩いていたところ、重油まみれで苦しむペンギンを発見。どうすることもできないとそのまま帰ろうとしたところ、カリナに咎められる。致し方なくホテルへ連れ帰り、カリナと共にペンギンを洗ってやる。ペンギンが綺麗になってやっとベッドインと思ったのに、カリナは既婚者だと言ってにこやかに部屋から立ち去ってしまう。美女と寝ることは叶わず、残ったのはペンギンだけで……。
ホテルの部屋にペンギンを置き去りにしようとしたら、警察が来て、連れて行かなければ逮捕すると言われます。ウルグアイからアルゼンチンに戻るときもそう。なぜペンギンを連れているのかと問われ、事情を説明して置いて行こうとするとまた逮捕すると言われる。そのうえペンギンを連れて行く場合は金を払えと言われて拒否すると、じゃあ金は要らないから連れて行けって。もう絶対連れて行くしかないわけで(笑)。
話を聴かない生徒たちの注目を引くためにペンギンを授業に連れて行ったら大当たり。だけどペンギンを学校内に入れることはもちろん、敷地内の宿舎はペット厳禁だから大変です。トムが右往左往しながら面倒を見るうち、ペンギンのおかげで人同士のつながりが広がってゆきます。
のんびりした雰囲気かと思いきや、情勢が不安定な街ではあちこちで理不尽に人が捕らえられています。学校の清掃を担当している女性ソフィアも活動家の疑いをかけられて逮捕されますが、その場に居合わせたトムは自分も捕まるのが怖くて何もできなかったことを恥じるように。ソフィアの祖母マリアにそれを打ち明けるシーンがいい。ペンギンにいろんな人が愚痴をこぼすのにも笑った。特にジョナサン・プライス演じる校長のぼやきは必聴(笑)。和める良い作品でした。
『仮面ライダーガヴ ギルティ・パルフェ』
『仮面ライダーガヴ ギルティ・パルフェ』
監督:柴崎貴行
出演:知念英和,日野友輔,宮部のぞみ,庄司浩平,鎌田英怜奈,田淵累生,たかし,小松利昌,板橋駿谷,新木宏典他
声の出演:木村良平
なんばパークスシネマにて4本ハシゴ。2本目の『WEPONS/ウェポンズ』と後述の4本目の間がビミョーに空いていて、ロビーで本を読んでいようかと思ったけれど、本作ならちょうど観られそう。イマドキの“仮面ライダー”がどうなっているのか観てみることにしました。
“仮面ライダーガヴ”は今夏に最終回を迎えたシリーズなのだそうです。何にも知らないまま観て、復習もしていないのでわからないことだらけ。本編開始前に併映される“ゴチゾウ”の意味がまずわかりません。なんだこのミニチュア自販機みたいな物体は。それにタイトルからして「ギルティ・パルフェ」って、私の知る時代の仮面ライダーにはあり得んスイーツっぽい名前は何なのよと思いながら観はじめました。誰がガヴなのかもわからなくて、観終わってから「おおっ、あっちがガヴだったのか」と知る始末。(^^;
なんだかよくわからないけれど、とにかく仮面ライダーのどれかと、仮面ライダーに父親を殺された異星人の娘と、その娘に家族の誰かを殺されたまた別の異星人が戦います。仮面ライダーに父親を殺された娘はグラニュー糖!?と思ったら「グラニュート」という異星人でした。仮面ライダーが変身するときにベルト付近にセットするのがゴチゾウ。後から調べてみたら、ゴチゾウは眷属なんですね。グミだったりチョコパだったりするゴチゾウをセットするとパワーが出るらしい。イマドキすぎる。
巷では闇菓子というものも密かに取引されていて、グラニュートを捕まえて闇菓子や闇料理の食材として使うんですと。闇鍋じゃあるまいし、闇菓子って(笑)。捕まえたグラニュートの娘を調理台の上に載せるのはちょっと悪趣味だと思う。頼りになる闇医者・狩藤先生役の新木宏典にちょっと興味が湧きます。
ハシゴの隙間を潰すために観た作品でしたが、これはこれで楽しめます。かつて“仮面ライダードライブ”を観たときは、「もはやライダーですらないんだわ」と衝撃を受けましたが、この「首にドーナツを巻いている仮面ライダー」には笑った。時代は変わる。





