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『佐藤さんと佐藤さん』

『佐藤さんと佐藤さん』
監督:天野千尋
出演:岸井ゆきの,宮沢氷魚,藤原さくら,三浦獠太,田村健太郎,前原滉,山本浩司,八木亜希子,中島歩,佐々木希,田島令子,ベンガル他

夙川でひとりランチの後、TOHOシネマズ梅田へ向かう。毎度のことで「観るなら飲むな、飲むなら観るな」の掟破り(笑)。同じ天野千尋監督の『ミセス・ノイズィ』(2019)は居眠りする隙がなかったけれど、本作はどうでしょう。

大学のサークルで出会った佐藤サチ(岸井ゆきの)と佐藤タモツ(宮沢氷魚)。意気投合して同棲を開始。弁護士を目指すタモツは司法試験に落ちつづけて5年が経過。彼を応援するために一緒に勉強しはじめたサチだけが司法試験に合格するという皮肉な結果に。その後サチは出産。弁護士として多忙な日々を送りつつも子どもに精一杯の愛情を注ぐ。一方のタモツも弁護士になる夢をあきらめることなく勉強を続け、家事と子育てをこなしているが、鬱屈した思いを抑えきれず……。

はい、予想どおり寝ました(笑)。アルコールがまだ残っていた序盤に寝てしまったので、ふたりの出会いから出産まで辺りが抜けています。その後は覚醒してちゃんと観ることができました。

タモツにはわりとイライラさせられます。サチが文句を言いたくなるのもわかるけど、そこよりもイラッとしたのは実家に行ったときのシーン。口は動くけど体は動かない母親が「デイサービスになんて行きたくない」と言い募り、タモツの弟妹は「兄ちゃんの言うことなら聞くから説得してほしい」と言います。するとタモツは「うん……。でもお母さんが行きたくないと言うならそのほうがいいんじゃないかな」って。これ、母親と弟妹の目の前での会話です。自分は日頃介護に関わらずにポッと実家へ寄っただけのくせに、介護している家族の気持ちをまったく考えないその発言。母親は「それ見たり」の嬉しそうな表情。実際に世話をするのはその長男じゃないですから。そんな長男がちょっと片付けを手伝おうとしようものなら、母親は「せっかく帰ってきたんだからタモツはゆっくりしとき」。実家にほぼ寄りつかなくても長男は長男。長男は偉いという神話は「あるある」で、苦笑いしてしまう人も多いのでは。

サチはどんどん先を歩き、昼食を取るひまもないくらい忙しい。タモツが作ったお弁当を食べずに帰って来ることもあります。弁当箱を見て怒りを抑えられないタモツは、あとで食べるからとサチが言っているにもかかわらず中身をゴミ箱にぶちまけます。地元の友人たちとNPOを立ち上げることを思いつくと、実家の面倒も見られるしサチはどこででも仕事できるだろうしと思うのか、「実家の近くに引っ越そう」と言い出す。実に短絡的。

15年こんな生活が続いたら結局これが夫婦最善の形になるのかなと思います。

『KILL 超覚醒』

『KILL 超覚醒』(原題:Kill)
監督:ニキル・ナゲシュ・バート
出演:ラクシャ,ラガヴ・ジュヤル,ターニャ・マニクタラ,アブヒシェク・チョウハン,パート・ティワーリー,アドリヤ・シンハ,ハーシュ・チャーヤ,アシーシュ・ヴィディアルティ他

『港のひかり』だけなら、仕事帰りにシュシュッと寄れる劇場があったのですが、このインド映画を観るならばなんばか尼崎まで行かねばならず。どちらにしようかとしばし迷い、ハシゴできるなんばパークスシネマを選択。

国際インド映画アカデミー賞で悪役賞と新人男優賞ほか5冠を獲得したというヒンディー語作品。ちなみに国際インド映画アカデミー賞とは2000年に設置されたインドにおけるヒンディー語作品のみを対象とした賞。過去に司会を務めたのはプリヤンカー・チョープラーシャー・ルク・カーンサルマーン・カーンなどボリウッドのスーパースターばかり。しかし映画ファンによるオンライン投票によって受賞作品と受賞者が決められるとなると、何でもありであんまり当てにはならん気もしますが、ハリウッドリメイクが決定していると聞いてスルーできませんでした。

NSG(National Security Guards:テロ対策特殊部隊)に所属する凄腕の軍人アムリトとヴィレシュ。ある日、恋人トゥリカから「父親が勝手に決めた相手と結婚させられそうになっている。今日が婚約式。助けに来て」とアムリトに電話が入る。驚いたアムリトがヴィレシュの運転で婚約式会場に向かうと、意外に冷静なトゥリカは、財界の大物である父親タークルから今逃げるのは無理だから、明日以降になんとかしようと言ってアムリトを一旦引き上げさせる。翌日、結婚前の旅行のために特急寝台列車に乗り込むトゥリカとその家族たち。目的地のデリーでアムリトと落ち合う約束をしていたが、待っていられないアムリトはヴィレシュと共に同じ列車に乗り込む。

ところがこの列車には強盗団が乗っていた。総勢40人におよぶ親族で結成された凶悪強盗団を仕切るのはファニ。途中にはファニの父親ベニが率いるこれまた親族が待機している。抵抗する乗客を容赦なく殺す一団相手に、アムリトは反撃を開始して……。

親族を何十人も集めて強盗って、どないやねん。女子供であってもぶっ刺すわ喉かき切るわ、えげつないことこの上なし。それなのに親族の誰かを殺されると「どうして殺したんだ」とアムリトやヴィレシュを責める。どの口が言う。そしてトゥリカはわりと早いうちにファニに殺されるというまさかの展開で驚きました。

本作の公式サイトを観たときは、アムリト役のラクシャのことをあまりカッコイイと思えなかったのですが、かなりのイケメン。トゥリカを殺されてキレたアムリトがこれでもかというぐらい強盗団を伸していきます。脳ミソぐちゃぐちゃになるまで殴ったりもしてほとんどスプラッタ(笑)。けどスッキリですよん。

警察、最初からおったんかい。なんで気づかんとのんびりしとるねん。ツッコミどころはいっぱいだけどそれも楽し。

『港のひかり』

『港のひかり』
監督:藤井道人
出演:舘ひろし,眞栄田郷敦,尾上眞秀,黒島結菜,斎藤工,ピエール瀧,一ノ瀬ワタル,MEGUMI,赤堀雅秋,市村正親,宇崎竜童,笹野高史,椎名桔平他

年の瀬が近づいてくると道がめちゃめちゃ混むんですよね。空いているときなら仕事帰りに40分程度でミナミまで行けるのに、今は1時間半かかります。それでも復路は30分で帰れるから、車で行くのはやめられない。往路の混みっぷりにゲンナリしながらなんばパークスシネマへ。

『正体』(2024)の藤井道人監督によるオリジナル脚本。藤井監督はまだ39歳ですが、1年にどんだけ撮るねんというぐらい撮りまくり。映画のみならず、Netflixで話題になっている岡田准一プロデュースのTVドラマ『イクサガミ』まで手がけて勢い止まらず。そんな藤井監督が主演に舘ひろしを起用。これはちょっと意外。だって、舘ひろしっていつまで経っても“あぶない刑事”のイメージなんだものと思ったけれど、そうか、藤井監督は『パレード』(2024)でも舘ひろしを起用していましたね。

ヤクザの三浦(舘ひろし)は父親と慕っていた組長の河村(宇崎竜童)から除籍を言い渡された後、旧知の荒川(笹野高史)の世話を受けて小さな港町へやってきた。今は漁師をしながらひとりで暮らしている。ヤクザだったということはどこで聞きつけたか町中の者が知っていて、荒川やごく一部の住人以外は三浦と口を利こうとしない。誰も三浦に面と向かって何かを言う度胸もなく、陰口を叩いては嘲笑っている。

ある日、盲目の少年・幸太(尾上眞秀)がいじめられているところに出くわした三浦。荒川によれば、幸太は事故で両親を亡くし、自身は一命を取り留めたものの失明。遺産目当てに彼を引き取った叔母(MEGUMI)のもとに身を寄せているとのこと。叔母の連れ合い(赤堀雅秋)からは暴力をふるわれているらしく、表情は暗い。ふと三浦が幸太に声をかけたことからふたりの交流が始まる。

幸太を病院に連れて行き、診察を受けてみると、手術をすれば幸太の目は見えるようになると言う。その費用は500万円ほどで、叔母が出すとは思えない。そこで三浦はいまだ彼のことを兄貴と慕う大塚(ピエール瀧)を使って、河村の後に組長の座に就いたろくでなしの石崎(椎名桔平)の金を頂戴することに。金の調達に成功すると、三浦は自首する。そうとは知らない幸太は、名前も知らない「おじさん」に荒川を通じて手紙を送り続け、やがて刑事になるのだが……。

成人した幸太を眞栄田郷敦が演じています。三浦のことを気にかける刑事には市村正親。善人側の人々がみんなものすごく温かいのに対し、石崎の憎たらしいこと。さらには斎藤工演じる石崎の舎弟・八代は見た目も怖すぎる。イカれた斎藤工を見ることができます。

赤の他人の少年のために三浦がここまでしようとするのはなぜなのか。荒川に問われた三浦は、幸太がひとりの人間として自分と接してくれたからだと言います。人間の強さとは何か。誰かのために生きられるということ。

能登半島地震復興応援の一環として製作された作品です。人々の光とならんことを願う。

『君の顔では泣けない』

『君の顔では泣けない』
監督:坂下雄一郎
出演:芳根京子,高橋海人,西川愛莉,武市尚士,中沢元紀,林裕太,石川瑠華,前野朋哉,前原滉,ふせえり,大塚寧々,赤堀雅秋,片岡礼子,山中崇他

『阪神タイガース THE OFFICIAL MOVIE 2025 栄光の虎道(こどう)』の鑑賞後、同じくTOHOシネマズ伊丹にて。

君嶋彼方の同名ベストセラー小説を『決戦は日曜日』(2022)の坂下雄一郎監督が映画化。体が入れ替わる話を観ると、必ずどっちがどっちだったか錯覚を起こしてしまいます(笑)。

30歳の坂平陸(芳根京子)と水村まなみ(高橋海人)は毎年同じ日に喫茶“異邦人”で会う約束をしている。15歳だった高校生の夏、お互いの体が入れ替わってしまって以来、元には戻らずそのまま15年の月日が過ぎた。1年に1度こうして会って近況を報告し合い、いつか元通りに戻れないものかと探っているのだ。

あの夏、一緒にプールに飛び込んだ翌朝、目覚めると体が入れ替わっていたふたり。陸として生きることを余儀なくされたまなみ(武市尚士)、そしてまなみとして生きることになった陸(西川愛莉)。見た目は陸のまなみは、陸の両親(山中崇片岡礼子)や弟(林裕太)との生活に順応し、女子とも上手くつきあっている様子。しかし、見た目がまなみの陸は、両親(赤堀雅秋大塚寧々)が陸とまなみのことを恋人同士と思いたがるせいでイライラを募らせ……。

まず30歳のふたりが登場し、15歳まで遡って、時折また30歳のふたりを映し出しながら、17歳、24歳、27歳というふうに節目節目を過ごしたふたりの様子を描いています。

体が入れ替わったことはふたりだけの秘密。誰にも言わず、バレないように過ごしてきました。「私」「俺」と言うのはふたりきりで会うときだけ。友人たちのなかにはふたりがなんだか変わったことを察知していた者もいます。それでも友人関係が続いた相手もいれば、ぎくしゃくして仲が壊れた相手もいる。陸は親友だった田崎淳一(中沢元紀)からまなみとして告白されるはめに陥ったりも。結婚もして、子どもも産み、ここまで来るといろんな人への責任が生じて、見た目がまなみの陸は元に戻ってはいけない気がしてしまう。一方の見た目が陸のまなみは、どうしても元に戻りたい。ふたりの話が聞こえているであろう異邦人の店主役のふせえり前野朋哉の表情がいいですね。

元に戻ったかどうかわからないままのエンディング。あなたはどちらだと思いますか。

『阪神タイガース THE OFFICIAL MOVIE 2025 栄光の虎道(こどう)』

『阪神タイガース THE OFFICIAL MOVIE 2025 栄光の虎道(こどう)』
監督:今村圭介
ナレーション:佐藤隆太

18年ぶりにリーグ優勝、そして38年ぶりに日本一になった2003年は確かに嬉しかった。そのときほどの興奮は私にはなく、本作もスルーしかけていました。だけど、やっぱり観なきゃいけないよねぇとTOHOシネマズ伊丹へ。観てみたらやっぱりよかった(笑)。

球団創設90周年の今年、2リーグ制となった1950年以降ではNPB史上最速でリーグ優勝を成し遂げた阪神タイガース。藤川球児監督の話を聴きながら今シーズンを振り返ります。選手会長の中野をはじめとする面々が藤川監督や今年のチームについて語る。佐藤、大山、森下、近本、坂本、村上、才木などの主要メンバーのみならず、ちょっと頑張ったルーキー伊原や、伊原以上に凄いルーキーが出てきたかと思われたのにその後は活躍できなかった工藤、エラーに泣いた木浪などの談話もあります。石井大智が打球を受けたシーン、彼が復帰した日のことももちろん。選手の補強に頼ることなく育てる。不気味なチームにしたいと言う球児。

この日、帰宅後に観たかまいたちMCの『余談ですけど』。テーマは「オリックスと阪神の違い」でした。ゲスト出演していた能見が、オリックスファンは球場に行くことを娯楽のひとつとして考えているが、阪神ファンは「球場に行ったらなアカン」と考えていると話していました。本作を観に行った私がまさにこの「観に行ったらなアカン」だったから笑ってしまった。

暗黒時代も懐かしいけど、やっぱり黄金時代が続いてほしいと思うのでした。