『ホウセンカ』
監督:木下麦
声の出演:小林薫,戸塚純貴,満島ひかり,宮崎美子,安元洋貴,斉藤壮馬,村田秀亮,中山功太,ピエール瀧,花江夏樹他
前述の『劇場先行版 ゴールデンカムイ 札幌ビール工場編 前編』の後、同じく109シネマズ大阪エキスポシティにて。
2021年に人気を博したTVアニメ『オッドタクシー』の監督・木下麦と脚本家・此元和津也がふたたびタッグを組んだオリジナルアニメ。アニメーションの制作を手がけたのはCLAP。老年を迎えた主人公の声を小林薫、若かりし頃の声を戸塚純貴が担当しています。彼の内縁の妻だった女性の今の声は宮崎美子、昔の声を担当するのは満島ひかり。喋るホウセンカの声はピエール瀧。
殺人罪で無期懲役の刑を受けて服役中の老人・阿久津実。これまでに何度か申請した仮釈放は認められず、このまま独房で生涯を終えるだろう。しかし彼は大逆転があると鉢植えのホウセンカに話しかける。このホウセンカは実が暮らしていた家の庭に咲いていたもので、今は実と共に独房にいる。ホウセンカの声は生まれたての赤ん坊か死にかけの人間にしか聞こえない。
かつて、ヤクザの実は飲み屋で知り合った妊娠中の女性・永田那奈と暮らしていた。誰の子かもわからない赤ん坊が腹の中にいるというのに那奈と一緒になると決め、生まれたばかりの男児・健介にパパと呼ばせることなく過ごす。籍を入れることを望んでいた那奈にも、ヤクザの家族として生きるのは大変なことだからと断って面倒を見続ける。
あるとき、健介の心臓に疾患があることがわかる。アメリカで心臓移植を受けるには数億円の金が必要。アニキ分の堤に金を貸してくれるように頼むが、さすがに堤にもそんな金はない。そこで堤が実に持ちかけたのは、組長から目をかけられている若松を殺して金庫の金を盗むことで……。
ホウセンカからなぜ那奈と健介を引き取ったのかと聞かれた実はポツリ、「好きだったから」と答えます。ほかに理由なんてない。3人で築いた家庭で過ごした時間はこのうえなく幸せだったはずなのに、いつしか金を持つようになって家には帰らなくなります。那奈に愛想を尽かされても不思議はなかった頃に健介の心臓疾患がわかり、なんとかしたいと思う。ただ、好きだから。大切だから。
堤の罪をかぶって刑務所に入ると、堤の性格を考えて那奈と健介を守ろうとします。何年もかけて考えた大逆転は、実がどうにかなるということではありません。那奈と健介の人生大逆転を実が実現することこそが夢。何十年離れていようが、実の手紙から意図を読み取り、大逆転を果たす那奈。
喋るホウセンカだなんて変な設定だなぁと思いましたが、佳作。人生っていいものだ。
『劇場先行版 ゴールデンカムイ 札幌ビール工場編 前編』
『劇場先行版 ゴールデンカムイ 札幌ビール工場編 前編』
アニメーション制作:ブレインズ・ベース
声の出演:小林親弘,白石晴香,伊藤健太郎,大塚芳忠,中田譲治,津田健次郎,乃村健次,菅生隆之,杉田智和,松岡禎丞,竹本英史,小西克幸,関智一他
“ゴールデンカムイ”は野田サトルの原作を読んだこともなければTVアニメ版も観たことがありません。私がわかるのは実写版の『ゴールデンカムイ』(2023)で知り得た情報だけ。なんだか訳がわからないまま割引なしの一律料金1,700円を払って109シネマズ大阪エキスポシティに観に行きました。
『週刊ヤングジャンプ』での連載はすでに終わっているのですね。2014年から8年近くに渡って連載され、全314話で終了。単行本は全31巻とのこと。2018年に放送が始まったTVアニメ版は2022年に第4期に突入して翌年終了。そして来年1月には第4期に続く最終章の放送が開始されるそうで、本作はその最終章のうち“札幌ビール工場編”を放送に先んじて劇場公開するというもの。
……とか全然知らんし、登場人物も誰がどんな人やらさっぱりわからずに観ましたが、それに耐え得るのがスゴイとこ。最初は何もわからず、観ているうちにこの杉元が実写版で山﨑賢人が演じていた人で、アシリパは山田杏奈が演じていたアイヌの少女だということはすぐに思い出す。鶴見や土方は誰が演じていたのかまったく思い出せなかったけれど、そうかそうか、玉木宏と舘ひろしでしたね。
なんだかよくわからんけど、札幌では街娼を狙った連続殺人事件が起きていて、みんなでその犯人を追っているらしい。追いかける側にも敵と味方がいて、ビール工場に逃げ込んだ犯人を追いながら乱闘が繰り広げられます。やがてビールの樽が転がり落ちてそこらじゅうビールだらけに。酔っぱらいながら銃やら刀やらで必死に闘う杉元ら。
話について行っているようないないような状態なのに睡魔に襲われることなく最後まで観られたのは、やっぱり面白いんでしょうね。後編も観に行きます。
『ファイナル・デッドブラッド』
『ファイナル・デッドブラッド』(原題:Final Destination Bloodlines)
監督:アダム・スタイン,ザック・リポフスキー
出演:ケイトリン・サンタ・フアナ,テオ・ブリオネス,リチャード・ハーモン,オーウェン・パトリック・ジョイナー,アナ・ローア,リア・キルステッド,ティンポ・リー,エイプリル・テレク,アレックス・ザハラ,マックス・ロイド=ジョーンズ,ブレック・バッシンジャー,ガブリエル・ローズ,トニー・トッド他
テアトル梅田にて2本ハシゴの2本目。前述の『層間騒音』の次に。
“ファイナル・デスティネーション”シリーズの第1作『ファイナル・デスティネーション』(2000)が公開されてから25年。2011年までの間に5つ作られてきましたが、こんなにも人気があるとは知りませんでした。第6作に当たる本作が公開され、平日昼間の回は満席。私が観た20:50からの回もわずかな空席を残すのみ。年齢層も若い子から高年まで取り込んでいてビックリです。
最初からネタバレ混じりで書くことをご了承ください。
1969年。高層タワーレストラン“スカイビュー”のオープン初日にやってきたアイリスと恋人ポール。最上階のレストランフロアは飲んで食べて踊る客たちで大賑わい。しかし、ある悪ガキが投げたコインのせいでタワーが倒壊。何百人ものが地上に叩きつけられて死亡する。アイリスはなんとか踏ん張りつづけるが、母親とはぐれて泣いていた黒人の男児と共に最後に転落死する。
50年以上の月日が経った日、上記の夢を毎晩見るようになって成績ダダ下がりの大学生ステファニーは、夢に出てくる女性の名前が自分の祖母の名前と同じであることが気になり、久しぶりに帰郷する。夢の真相がわかれば悪夢を断てるはずだから、父親マーティに祖母の話を聴きたいと言うとマーティは渋い顔。そこでステファニーの弟チャーリーがいとこの家に遊びに行くのについて行き、叔父ハワードに祖母のことを聴こうとするが、ハワードは祖母を変人呼ばわりして何も教えてくれない。かろうじて叔母ブレンダから情報を得たステファニーは、叔父叔母宅の引き出しに入れられていた手紙を頼りに、今まで会ったことのない祖母アイリスに会いに行く。
人里離れた場所で要塞のような家を築いてひとりで暮らしているアイリスは、スカイビューの事故を自分が予知したおかげで客たちが助かったことをステファニーに話す。しかしすべては死神の計画であり、死神は一度立てた計画をあきらめることはないから、事故で死ぬはずだったのに助かった人をひとりずつ順番に死に至らしめていると。こんな話を信じられるはずもなく、その場から逃げだそうとしたステファニーだったが、彼女を追いかけてきたアイリスが目の前で死亡。アイリスこそが次に死ぬ順番の人だったことを知る。家を出ることさえなければまだ生きていられたのに、信じないステファニーに信じさせるために目の前で死んでみせたのだ。
自分たち一族が死に絶える運命であることを家族たちに知らせて防御策を練ろうと提案するも、誰も信じない。ところがハワードがまず死に、その娘ジュリアもありえない死に方をする。血縁関係にない者は死神の予定にないから、マーティとブレンダは大丈夫。リストに載っているのはステファニーとチャーリー、その母親ダーリーン、ハワードの息子エリックとボビーのはず。ステファニーの話を信じざるを得なくなった彼らは、なんとか生き延びようとするのだが……。
このシリーズは容赦がありません。そこが面白い。最初の悪ガキは悪ガキとはいえ子どもだから、まぁ死なないのかなと思ったら、スカイビューの1階に降りたってニヤリと笑ったところで上から落ちてきたグランドピアノの下敷きになって死亡。全然かわいそうとは思えないぐらいの悪ガキでしたけど、この時点で笑ってしまう。
ただのB級ホラーかと思いきや、意外にもストーリーがちゃんとしていてアッパレ。どうしてこんなに人気があるのかわかるような気がします。主役は生き残るのが当たり前なのでしょうが、そこも容赦なし。生き残ったかと見せておいて、わはは、そう来ますか。ハッピーエンドではないけれど、笑って楽しめる痛快ホラーです。誰も死神には勝てないんですねぇ。(^^;
『層間騒音』
『層間騒音』(英題:Noise)
監督:キム・スジン
出演:イ・ソンビン,キム・ミンソク,ハン・スア,リュ・ギョンス,チョン・イクリョン,ペク・ジュヒ,キム・ギョンリョン他
テアトル梅田にて。梅田スカイビルにある劇場はシネ・リーブル梅田だという感覚がずっと抜けませんでしたが、ようやく間違えずにテアトル梅田と言えるようになりました。
2本ハシゴの1本目は韓国で大ヒットしたホラーサスペンス作品。監督は本作が長編デビューとなるキム・スジン。主演のイ・ソンビンをどこかで見たことがあると思ったら『ミッション:ポッシブル』(2021)でした。面白くて好きだった作品だけど、本作とはあまりに彼女のイメージが違っていて観終わっても気づかず。あっちは明るくこっちは徹底して暗い。そりゃまぁホラーですから。綺麗な人だなぁ。ちょっと北川景子に似ていませんか。
聴覚障害を持つジュヨン(イ・ソンビン)は、両親を亡くしてから妹のジュヒ(ハン・スア)とふたりで暮らしてきたが、正確に難ありのジュヒに手を焼き、今はジュヒから離れて会社の寮住まい。ある日、ジュヒの無断欠勤が続いていて連絡も取れないと勤務先から電話が入る。慌ててジュヒが住むマンションの604号室へ行ってみるとジュヒはいない。部屋には異様な雰囲気が漂い、スマホや財布は置きっぱなし。いったい何があったのか。
しばらくすると真下の504号室の男性(リュ・ギョンス)がやってきて、騒音を立てるのはやめてくれと言われる。次にうるさくすれば口を裂くとまで言われ、音など立てていないジュヨンは戸惑う。呆然としているところへジュヒの恋人だというギフン(キム・ミンソク)が現れて相談。警察に相談してもどうにも動いてくれそうになく、ギフンとともに作成したチラシを配りはじめるのだが……。
ここにあらすじとして記したシーンより前に、まずは冒頭、ジュヒが部屋でヒステリックに動き回っているシーンが映し出されます。毎日騒音に悩まされているジュヒは、天井にびっしりと防音シートを張ってみたものの効果なし。騒音のもとを突き止めると決意して、録音を試みていた様子。このジュヒが主人公なのかな、それにしてはちょっと地味な顔立ちの女優だと思っていたら場面が切り替わり、主役がジュヨンとなります。うん、彼女のほうが主人公っぽい見た目だ(笑)。
心理的な怖さは最近でいちばんだったかもしれません。ジュヒの行方を探るうちにジュヨンが知ることになるこのマンションの秘密。604号室はいわゆる事故物件で、え、韓国には告知義務がないのかと驚く。504号室の兄ちゃんは包丁持参でやってきて、目が据わっているから怖いのなんのって。704号室でも何かあったようだし、マンションの婦人会会長(ペク・ジュヒ)は物件の資産的価値が下がることを懸念してジュヨンを黙らせようとします。唯一親切なのが804号室の女性(チョン・イクリョン)ですが、この状況では親切なこと自体怪しい。
できれば心霊現象とは結び付けない話で終わってほしかったところ、結局「出ます」という話。解決したように見せかけての不穏な終わり方にまたゾーッ。大切な人を亡くしたら、こうなってしまうのかと思わなくもない。
『トロン:アレス』〈4DX3D版〉と〈IMAX版〉
『トロン:アレス』(原題:Tron: Ares)
監督:ヨアヒム・ローニング
出演:ジャレッド・レトー,グレタ・リー,エヴァン・ピーターズ,ハサン・ミンハジ,ジョディ・ターナー=スミス,アルトゥーロ・カストロ,キャメロン・モナハン,ジリアン・アンダーソン,ジェフ・ブリッジス他
朝イチにTOHOシネマズ梅田で『秒速5センチメートル』を観てから阪神西宮に向かい、旧知のシェフの新店でランチ。長居させてもらってべろべろに酔っぱらってから今度はTOHOシネマズなんばへ。この日の〆がNGKと決まっているから、その前にもう1本映画を観ようという魂胆です。
CGを世界で初めて本格導入した作品として話題を集めた『トロン』(1982)の続編『トロン:レガシー』(2010)のさらなる続編。監督は『コン・ティキ』(2012)や『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(2017)のヨアヒム・ローニング。と書いていて気づく。ん?『トロン』は古いからともかく、『トロン:レガシー』は私どうして観ていないんだろう。ジョセフ・コシンスキー監督なのに。
字幕版と吹替版はもとよりIMAX版に4DX3D版とあらゆる上映方式で公開されている本作。どの上映を観ようかとスケジュールを眺めていて、ランチとNGKの間にピッタリはまるのは4DX3D版でした。酔っぱらいなのよ私。4DXか3Dのどちらか片方ならまだしも、両方って大丈夫なのかしら。ゲロゲロ状態になったりせぇへんやろか。こんな心配は無用だったんです。なぜなら序盤から爆睡してしまったから(涙)。
最新技術によってデジタル世界から現実世界に送り込まれた史上最強のAI(人工知能)兵士“アレス”に異変が生じて制御不能に。AIたちの暴走が始まって人類は危機に陥るというストーリーのうち、起きていたのは最初の最初だけ。4DXがまさにちょうど良い揺りかご状態だったのでしょう。いかにも観たように記事をあげてすみません。「観るなら飲むな、飲んだら観るな」の掟をどうしても守れない私なのでした。うえーん。
と書いた4日後、クライマックスシリーズの第2戦の日。第3戦以降は甲子園で生観戦する予定で、第2戦までは家でしっかりテレビ観戦しなきゃと思いつつもそれが怖くて、これ1本だけ109シネマズ箕面で観て帰ることにしました。
いや~、もうビックリしましたね。こんなに面白いのに、どうして私は1度目のときに寝てしまったのでしょう。最初から寝てたやん。ストーリーまったくわかってなかったし。ほぼ初見と言ってよし(笑)。『トロン:レガシー』を観ていないから話について行けずに寝てしまったのだと思っていましたが、そんなことはありません。前作未見でもじゅうぶんに楽しめます。が、前作未見であらすじを書くので、ところどころ間違って理解していたらすみません。
ディリンジャー社とエンコム社は共にAIプログラムを開発するライバル企業です。と言っても、ディリンジャー社のCEOジュリアン・ディリンジャーが一方的にエンコム社のCEOイヴ・キムを敵視しているように見えます。ジュリアンは投資家たちを招いてディリンジャー社がこのたび開発したAI兵士アレスをリーダーとするAI部隊を披露しますが、実はAIの持続時間は29分間であることを隠しています。AIの実装時間29分の壁を破れずにいるのはエンコム社も同じことでしたが、イヴがそのための永続コードをついに発見。それに気づいたジュリアンは、アレスを使ってコードを強奪しようとします。コードを入手した後はイヴを殺すようにとジュリアンから命じられたアレス。
最初はご主人様の命令がすべてだったのに、どんどん賢くなるアレスは「使い捨て」だと言われることに疑問を感じはじめると同時に、同じAIの開発者であってもジュリアンとイヴがまるで違う人間であることに気づきます。いわばイヴには愛がある。AIを軍事利用しようとしているジュリアンと、人や動物や自然を救うためにAIを使おうとしているイヴ。戸惑ったり思案したりするなんてAIとしては欠陥品であるけれど、私たちはアレスのことがどんどん好きになってゆきます。
アレス役のジャレッド・レトはこれまで彼が演じてきた役の中でいちばん好きかも。顔もタイプじゃないし、キワモノ役のイメージが強くて好きにはなれない人でした。でもこのアレスはチャーミングとでもいいましょうか、憎めない。ケヴィン・フリン役のジェフ・ブリッジスとモーツァルトおよびデペッシュ・モード談義を交わすところもよかったな~。
映画は素面で観よう!←きっとまた同じ過ちを繰り返す(笑)。





