『遠い山なみの光』
監督:石川慶
出演:広瀬すず,二階堂ふみ,吉田羊,カミラ・アイコ,柴田理恵,渡辺大知,鈴木碧桜,松下洸平,三浦友和他
109シネマズ大阪エキスポシティにて、前述の『ダークナイト』の上映終了時刻が21:30。本作の上映開始は21:45で、終了は23:55。日付変わるっちゅうねん。はよ帰りたいと思いつつも、週が明ければ鑑賞可能な時間帯に上映してくれるかどうかわからないから、致し方なく観に行きました。
原作は1982年に刊行された王立文学協会賞受賞作。原作者でノーベル文学賞作家カズオ・イシグロをプロデューサーに迎え、『蜜蜂と遠雷』(2019)や『ある男』(2021)の石川慶監督が映画化。原作未読で観に行き、ミステリーだったから驚いた。日本/イギリス/ポーランド作品です。
1982年。長崎出身で今はイギリスの片田舎に住む悦子(吉田羊)のもとをロンドン在住の次女ニキ(カミラ・アイコ)が訪ねてくる。大学を中退して作家を目指すニキは、戦後に長崎から渡英した悦子のことを原稿にしたい。なかなかすべてを語ろうとしない悦子だったが、話を聴きたがるニキに重い口を開いて語りはじめる。それは1952年に悦子の身の上に起きたこと。
戦後復興期だった当時、悦子(広瀬すず)は夫・緒方二郎(松下洸平)と長崎の団地住まい。お腹の中には赤ちゃんがいる。この夫婦宅にやってきた次郎の父親・誠二(三浦友和)はしばらく滞在するつもりらしいが、仕事に忙しい二郎は誠二に愛想がなく、悦子は誠二を気の毒に思う。
ある日、悦子は男児たちに取り囲まれいじめられている女児・万里子(鈴木碧桜)を見つけ、母親の佐知子(二階堂ふみ)のところへ連れ帰る。べたべたの長崎弁の悦子に対して佐知子は訛りがなく、洗練された雰囲気。聞けば通訳の仕事をしているときに出会ったアメリカ人男性とまもなく渡米予定だと言う。好きなことをすべてあきらめて結婚し、それでも幸せだと思っていた悦子は、自分とまるで対照的な佐知子を見て複雑な思いを抱く。
こうして始まる悦子と佐知子の交流。1982年の悦子の長女・景子は自殺したらしく、この時点でもしかして1952年の万里子が景子なのかなと思ったりもします。佐知子のことのように話しているけれど、本当は悦子のことじゃないのかしら、とも。なにしろ遅い時間からの上映だったし、これより前に観たのが152分の『ダークナイト』だし、少々古い時代の女性を演じる広瀬すずのことはあまり好きではないので、最初から寝るつもりで行きました。ところがこんな感じでミスリードされている感があるものだから、寝ていられない。最後まで見届けることに。
観終わって、不思議な気持ちに包まれます。1952年の悦子の「母親らしくって何ですか」という言葉がよみがえる。妻は夫に従順でいるのが当たり前で、貞淑な妻だった悦子のドスのきいた声が響き渡る瞬間。あまり好きじゃないと思っていたのに、みんながこぞって広瀬すずを起用したがる理由がわかった気がしました。
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