『海辺へ行く道』
監督:横浜聡子
出演:原田琥之佑,麻生久美子,高良健吾,唐田えりか,剛力彩芽,菅原小春,蒼井旬,中須翔真,山崎七海,新津ちせ,諏訪敦彦,村上淳,宮藤官九郎,坂井真紀他
MOVIXあまがさきにて前述の『子鹿のゾンビ』とハシゴ。この日は『子鹿のゾンビ』を観るぞと決めていて、上映劇場を調べたら私が寄れそうなのはここかなんばパークスシネマでした。ハシゴする作品を検討したときに、なんばパークスシネマのほうは寝てしまいそうなドキュメンタリーだったからMOVIXあまがさきを選んだのに、本作で寝ちゃったじゃあないか。居眠りする頻度が高くてすみません。マナームービーにもなっている本作は面白そうだったし、私の好きなタイプの作品だと思ったんだけどなぁ。
原作はKADOKAWA発行の『月刊コミックブーム』で連載されていた“海辺へ行く道”シリーズ。作者の三好銀は6年前に膵臓癌で亡くなっているということを鑑賞後に知りました。癌で亡くなった人だと聞くとついつい弟と重なってしまいます。鑑賞前に知っていたら寝なかったりして。
舞台はアーティストが多く集まる海辺の町。集まるというよりは集めていて、町自体がアーティストの移住を支援しているんですね。そういう町だからなのか、アーティストの資質を持つ若い子もいっぱいいる。主人公の奏介(原田琥之佑)は母親の寿美子(麻生久美子)とふたり暮らしの中学2年生で美術部所属。美術部員たちの作品展に毎年やってくる謎のA氏(諏訪敦彦)は奏介に才能ありと見て、人魚をイメージした作品の制作を依頼してきます。
最近この街にやってきたのが高岡(高良健吾)とヨーコ(唐田えりか)。どうにも怪しいこのカップルに物件を紹介するのは不動産会社に勤める理沙子(剛力彩芽)。高岡は包丁の実演販売をしているけれど、これは詐欺。高岡の見た目にのぼせあがったおばちゃんたちをカモにして、切れない包丁をバンバン売りつけているのです。
理沙子は物件を紹介した別の客・ケン(村上淳)に恋をして交際を始めます。アーティストだというケンに創作活動をしているふしはないものの、料理上手で優しいケンに理沙子は首ったけ。そこへ理沙子の友人で奏介の叔母でもあるメグ(菅原小春)が東京から帰郷。メグは東京の貸金業社で働いていて、借金を踏み倒して逃げたアーティストの捜索中だと言う。焦る理沙子。
あら、めっちゃ寝たつもりだったけど、こうして書いてみたらわりと観ていますね(笑)。そう、横浜聡子監督の作品は、『俳優 亀岡拓次』(2015)とか『いとみち』(2021)も好きでしたし、雰囲気はやっぱり好みなんです。ただ、主要な登場人物だけでもかなり多いのと、その周辺の人にもそれぞれにエピソードがあるのとで、話がどんどん広がって行くから集中力が持たなくて。
この季節だけ海辺のデッキにパラソルを立ててランチ販売をする静香(坂井真紀)の存在が面白い。また、海を潜ってランチを買いに来る五郎(宮藤官九郎)には笑います。静香の店は毎夏突然現れたかと思うと予告もなしに畳む。今年も忽然と姿を消してしまい、「えーっ。いなくなるなら言ってよ、このまえ買いに来たときは何も言ってなかったよ。いっつもそうなんだから」と五郎。静香がいなくなって夏が終わるのを知る。寂しい感じがよかったなぁ。
なんだかんだで良かったような気がしてきました。あんだけ寝といて言うな、ですけど。ひとつ文句をつけるなら、理沙子とケンの食事のシーン。ケンが用意したパスタをふたりともズルズル言わせながらすする。いまやパスタはラーメン並に「すすって食べる料理」のようで。フォークとスプーンを使ってパスタをすするケンを見て、理沙子は「食べ方が綺麗」とうっとりします。綺麗か!?
余談ですが、パスタを食べるときにスプーンは使わないほうがいいと某店のシェフから聞きました。もしも海外でフォークとスプーンを使ってパスタを食べるとバカにされると。店でも以前はフォークしか出さないようにしていたけれど、あまりに「スプーンください」という客が多いため、面倒くさいから今は最初からスプーンも出しているそうです。イタリアの北のほうではパスタを食べるのにスプーンも使うところがあるそうですが、南の人はそれをバカにしているらしく。バカにするのもどうかとは思うけど、バカにされたくはないから私はフォークだけで食べる。(^^;
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