『海がきこえる』
監督:望月智光
声の出演:飛田展男,坂本洋子,関俊彦,荒木香恵,緑川光,天野由梨,渡部猛,徳丸完,有本欽隆,金丸淳一,さとうあい,鈴木れい子,関智一他
徳間書店発行の『月刊アニメージュ』に1990年から約2年間にわたって連載されていた同名小説が、1993年に日本テレビ開局40周年記念番組としてアニメ化されました。制作に当たったのは当時スタジオジブリの若手だったスタッフたち。30年が経過した昨年、東京都内で期間限定で劇場公開したら連日超満員。で、こうして全国で3週間限定のリバイバル上映となった模様。
原作者の氷室冴子は1980年代から90年代にかけて集英社コバルト文庫の看板作家でした。彼女の名前はもちろん知っていますが、なぜか読んだ記憶がなくて。今どうされているのかと思ったら、2008年に肺癌を発症して51歳の若さでお亡くなりになったとのこと。50代で癌と聞くと駄目ですね、弟を思い出してしまう(涙)。
高知県で生まれ育った高校生・杜崎拓は、東京からの転校生・武藤里伽子のことが気になって仕方がない。美人で秀才なのに周囲にまるで馴染もうとせず、クラスの女子からは反感を買っているが、唯一、小浜裕実だけとは話をする里伽子。
拓の親友・松野豊は彼女に密かに夢中なのが明らかだから、拓は遠慮しているというのに、なぜか里伽子と縁があるのは拓のほう。休みを利用して東京へ行こうとしている拓についてきた里伽子のせいで、ふたりは一緒に旅をして宿泊までしたと噂が流れ、拓は大迷惑。里伽子を責めるとひっぱたかれて……。
三角関係というほどでもない、高校生の三角関係。卒業してそれぞれ別の大学へ行き、拓は東京、豊は京都へ。里伽子は高知に残ったはずが、拓は吉祥寺の駅のホームで里伽子に似た女性を見かけます。卒業後初めての同窓会に出席するために帰郷するも、クラスで浮いていた里伽子は当然来ていません。そこでどうやら里伽子は高知大学に合格していたのに行かずに東京へ行ったと知ります。あれはやっぱり里伽子だったのだと嬉しくなる拓。しかも里伽子が東京に会いたい人がいると言っていたこともわかり、まさにそれは自分のことなのですから。
里伽子不在の同窓会の場で同級生女子たちから拓が聴く話が○。「里伽子のことが嫌いだった、でもそれは彼女も私たちも狭い世界の中で生きていたから」だと。往々にして、いじめはヒマだから出てくるもの。幼稚園のときにいじめられっ子だった私もそう思います。ほかに興味を惹かれることがあればそっちに行くわけで、そうじゃないから誰かをいじめに走る。阿呆。
まぁ、里伽子のことは私も好きにはなれませんけどね。だってこんな女子、というのか、こんな女子のことを好きな男子って、典型的な「こいつのことをわかってやれるのは俺だけ」ってタイプじゃないですか(笑)。好きにはなれない登場人物たちでありながらも、この雰囲気は好きです。時期が自分の青春時代とかぶっているから、懐かしく感じる部分があるのでしょう。
エンディング、里伽子の声を担当する坂本洋子の歌には安田成美の『風の谷のナウシカ』を思い出して苦笑い。ごめんなさい。
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