『年少日記』(原題:年少日記)
監督:ニック・チェク
出演:ロー・ジャンイップ,ロナルド・チェン,ショーン・ウォン,ロサ・マリア・ヴェラスコ,
ハンナ・チャン,カーティス・ホー他
キノシネマ心斎橋にて4本ハシゴの3本目は香港作品。
監督はこれが長編デビュー作となるニック・チェク。
途中、自分の思い込みが覆されて「えっ!?」と声が出そうになりました。
どこから書いてもネタバレになってしまいそうです。
高校教師のチェンは、暴力をふるった男子生徒とクラスの委員長を務める女子生徒を呼び出し、事情を聴く。
男子生徒がいじめられているのは知っているが、暴力はいけないとチェンが諭すと、
先生は自身の離婚問題で頭がいっぱいなのに生徒にかまっている暇はないだろうと捨て台詞を吐かれる。
ある日、用務員がゴミ箱の中から見つけた紙きれには、自殺をほのめかす内容が書かれていた。
学校側はまもなくおこなわれる共通テストへの影響を鑑み、遺書を書いた生徒をあえて探さない方針。
しかしチェンは気が気ではなく、委員長に心当たりがないかを尋ねて協力を求めるのだが……。
チェンの子ども自体を描いている映像が間に挟まれています。
それは、富裕な家庭で育つ小学生兄弟の様子。
豪奢な家に住む彼らのうち、勉強もできてピアノも上手なのは弟のほう。
兄も弟のような成績を残して両親を喜ばせようとするけれど、できない。
それどころか進級できず、父親からはいつも殴る蹴るの体罰を受けています。
母親も父親から息子が不出来な責任を問われ、口答えすれば殴られる日々。
てっきり現在教師になっているのは不出来だった兄だと思っていました。
ところがずいぶん経ってから、いま私が見ているのは弟だとわかる。
実は兄は10歳の時に自殺しているのです。それをきっかけに弟も両親の期待に応えるのはやめたわけで。
誰にも心を見せられなくなった彼は、それでも大好きな人と出会い、結婚する。
だけど、自ら命を絶った兄のことを考えると、子どもを持つ自信がありません。
そのせいで妻との仲がぎくしゃくして別れ話に至ってしまう。
この世のどこにも居場所がなかったら、どう生きればいいのでしょう。
死にたいわけじゃない。でも生きているのはつらい。
静謐だけど残酷で、心に染み入る作品となりました。
今年が終わる頃になっても本作のことは心に残っていると思います。
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