『喝采』(原題:The Great Lillian Hall)
監督:マイケル・クリストファー
出演:ジェシカ・ラング,キャシー・ベイツ,リリー・レーブ,ジェシー・ウィリアムズ,ピアース・ブロスナン,マイケル・ローズ,シンディ・ホーガン,キース・アーサー・ボールデン他
NGKの夕方の回を観る日、十三で狙っていた作品があったのに、間に合うように家を出られず。それより1時間遅くから上映開始の本作を観ることにしました。大阪ステーションシティシネマにて。
2014年に亡くなったブロードウェイ女優マリアン・セルデスがモデル。その姪エリザベス・セルデス・アナコーンが脚本を担当しています。原題は邦題とはまるで異なる“The Great Lillian Hall”。『喝采』という邦題の作品は1929年にも1954年にも名作があります。そのうち原題も“Applause”だったのは最初のものだけ。日本人なら『喝采』と聞くとちあきなおみを思い出さずにはいられませんし、どうなのよと思っていましたが、やはり本作にはこの邦題がふさわしい。
ブロードウェイ女優のリリアン・ホールは誰もが認める大スター。何千回とステージに立ち、客たちは彼女目当てに押し寄せる。新進気鋭の演出家デヴィッドはこのたびチェーホフの『桜の園』に彼女を起用。評判を呼ぶことは間違いなく、連日舞台稽古がおこなわれている。
ところが、リリアンの様子がどことなくおかしい。台詞を間違えたり忘れたり、時には登場することすら忘れる。この舞台が失敗して膨大な損益が出るのを避けたいスポンサーは、デヴィッドを通してリリアンの精神科受診を命じる。致し方なく受診したリリアンは、自分が認知症を発症していることを告知されて……。
ノーマークだった作品ですが、とても見応えがありました。実際に大女優のジェシカ・ラングだからこそ演じられる役で、その風格が素晴らしい。並んで素晴らしいのはリリアンの秘書で家政婦のイーディスを演じるキャシー・ベイツ。リリアンの亡夫カールソンが20年分の給料を先払いしてくれたから辞められないとぼやきつつ、リリアンを支えつづけます。ジェシー・ウィリアムズ演じるデヴィッドも◎。自分の成功だけを考えているわけではなさそうな彼は、代役で行くべきだというスポンサーの意見に抵抗を見せ、リリアンでなければ駄目なのだと主張します。そしてできるだけリリアンに寄り添おうとする。
ずっとステージを渡り歩いたリリアンには、リリー・レーブ演じる一人娘のマーガレットと過ごす時間があまりありませんでした。マーガレットがそれを恨みに思っているふうはなく、今でも折を見ては美味しいキッシュやマフィンを焼いてリリアンに会いに来る。それはリリアンから経済的に援助を受けたいと思う下心もあってのことだけど、そこまでの嫌らしさは見受けられません。「出してくれたらありがたいなぁお母さん」程度の感じ。幼少時代にひとりで過ごすのは寂しかったろうに、それを態度に表すこともなかった彼女が、リリアンの認知症について初めて知ったときの様子には涙。自分は娘なのに何も知らされず、イーディスにすべて任せていたなんてどういうことなのかと。胸を衝かれるシーンです。
忘れてはならないのがリリアンの隣人タイ役を演じるピアース・ブロスナン。やっぱり色っぽいですよね(笑)、このオッサン。
リリアンが成し遂げる最後の舞台。本作を観ることができて、予定していた作品に間に合わなかったことを幸運に思いました。
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