MENU

『俺ではない炎上』

『俺ではない炎上』
監督:山田篤宏
出演:阿部寛,芦田愛菜,藤原大祐,長尾謙杜,三宅弘城,橋本淳,板倉俊之,浜野謙太,美保純,田島令子,夏川結衣他

キノシネマ心斎橋で前述の『ラスト・ブレス』を観た後、シアタス心斎橋に移動して。

原作は浅倉秋成の同名小説。読了時の感想はこちら。監督は『AWAKE』(2020)の山田篤宏。脚本は『空飛ぶタイヤ』(2018)、『糸』(2020)、『護られなかった者たちへ』(2021)、『ラーゲリより愛を込めて』(2022)、『ディア・ファミリー』(2024)、『少年と犬』(2024)など、数えきれないほどのヒット作を手がける林民夫。

大手ハウスメーカーの部長・山縣泰介(阿部寛)が部下の野井(板倉俊之)を連れて取引先を回っていたある日、昼食を摂るために訪れた店で周囲からの視線を感じる。泰介にスマホを向けて写真を撮ろうとする若者もいて意味不明。すると、社長から直ちに帰社するよう連絡が入る。社長室へ入ると「なんということをしてくれたんだ」とどやされ、泰介のものとおぼしきSNSのアカウントに女子大生の遺体画像が投稿されていることを知る。10年以上前に作られたらしいそのアカウントには、泰介の私物の写真がアップされており、世間は泰介を殺人犯として認識。瞬く間に自宅も勤務先もネット民によって確定され、情報が拡散される。

会社にも非難の電話が殺到し、とりあえず帰宅するように社長から命じられた泰介だったが、自宅には野次馬が押し寄せ、郵便受けにはネギが突っ込まれるという嫌がらせが。妻の芙由子(夏川結衣)は義母(田島令子)宅に避難。一人娘の夏美にも自宅には戻らないように連絡済みだと芙由子は言う。自宅に入ることもできず、車庫に駐めていたベンツに乗って逃走を図る泰介。

そもそも今回の炎上のきっかけは、大学生インフルエンサーの住吉初羽馬(藤原大祐)が友人から送られてきた画像をフェイクではないとしてリツィートしたこと。自分のせいでたいした騒ぎになったといっても、この山縣という男が犯人であることは間違いないから良いことをしたと思っている初羽馬のもとへ、サクラ(芦田愛菜)と名乗る女子大生が連絡してくる。サクラは泰介に殺された女性の親友で、何が何でも泰介を見つけたいのだと。泰介の行方を突き止めると言うサクラのために初羽馬は車を出して一緒に追いかけるのだが……。

大人気の脚本家ではありますが、私はこれまでの作品でもその改変が気になります。たとえば『護られなかった者たちへ』では原作の犯人が男性であったのに対し、映画版では女性が犯人でした。それには無理があると思ったものです。また、『少年と犬』では原作で最初に亡くなった青年が映画版では死なずに主人公。まるで違う話になっとるやないかいと思いました。本作はおおむね原作通りと思いきや、やはり大幅に改変されているではないですか。原作では取引先の男性社員が「山縣さんは犯人ではない」と信じる理由が好きだったのですが、映画版ではその男性社員・青江(長尾謙杜)ではなくて芙由子が刑事(三宅弘城&橋本淳)に理由を語って聞かせる。で、まさかまさかの改変が待っていました。(^^;

『護られなかった者たちへ』には「汚名を挽回する」という台詞が出てきたから、この脚本家と聞くと日本語への信頼度が下がります。本作での「ら抜き」への指摘は良いとして、「全然」は否定形とセットでしか使っちゃいけないという話については、根拠のないことだよと思うのでした。パスタを食べるのにスプーンとフォークを使ってズルズル言わせてすするのも個人的には許しがたいシーン。原作よりわかりやすかったけれど、些細なことを不満に感じてしまう作品でした。

でも、愛菜ちゃん、サイコー。人のせいにばかりする人間にはならないようにしなくちゃ。「悪かった」と言い合う家族の姿はよかった。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次