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『侵蝕』

『侵蝕』(英題:Somebody)
監督:キム・ヨジョン,イ・ジョンチャン
出演:クァク・ソニョン,クォン・ユリ,イ・ソル,キ・ソユ,ホ・ジョンド,シン・ドンミ,キル・ヘヨン他

マジック3だったから、どうせ阪神の優勝がこの日決まることはないしと、MOVIXあまがさきで映画をハシゴすることにして、プロ野球中継を聴きながら車を走らせました。

少女時代のユリが出演して韓国でヒットしたサスペンスホラーだそうですが、少女時代のユリがどの人なのかわからないのです。きっとこの綺麗な母親役の人がそうなんだわと思って観ていたら、途中でその人は出番がなくなってしまいました。ということはどの人がユリなのかしら!?という疑問は消えないまま最後まで観ることになったけど、それはどうでもいいぐらい面白かった。

水泳のインストラクターとして働くシングルマザーのヨンウン(クァク・ソニョン)は7歳の娘ソヒョン(キ・ソユ)の奇行に悩まされている。ソヒョンは生き物を傷つけたり痛めつけたりすることを好み、その対象は動物のみならず人間も含まれる。幼稚園に行けばほかの園児たちの心にも体にも傷を負わせようとして大事に至る場合も。

ヨンウンの夫がソヒョンを恐れて精神科に入院させようとしたところ、ヨンウンは断固反対し、自分ひとりでソヒョンを育て上げると主張して離婚を選択。ヨンウン自身が睡眠中にソヒョンに太股を切りつけられて大怪我を負ったこともあるというのに。娘を見捨てるなんて絶対にしないと心に決めていたのに、ソヒョンの奇行はおさまるどころかどんどんエスカレート。人をも殺しかねない娘を見て、ヨンウンは唯一、水を怖がるわが子を深夜のプールへと連れて行くと、そこで無理心中を図る。

20年後、特殊清掃の仕事に就いているミン(クォン・ユリ)。子どもの頃に自分を殺しかけた母親は気がふれて記憶を失い、長らく精神病棟に入ったまま。児童養護施設で育ったミンを自宅に引き取り、仕事を教えたのはヒョンギョン(シン・ドンミ)。気を遣われるのも面倒だから、自分が母親から殺されかけた話はヒョンギョンにはしていないし、過去の記憶がないのは母親ではなく自分のほうだということにしている。

いつものようにミンとヒョンギョン、チーム長のハン(ホ・ジョンド)が組んで仕事をしていると、新入りのヘヨン(イ・ソル)がやってくる。ミン以上に不幸な身の上らしいヘヨンをヒョンギョンは気にかけ、自宅に招き入れて好きなだけここで一緒に暮らせばいいと言うが、ミンはヘヨンに対する不快感をあらわにして……。

この先ネタバレ全開です。

前半はヨンウンがソヒョンと無理心中を図るシーンで終わります。ソヒョンはおそらく逃げて生き延びたっぽい。その一方で、プールの底に沈んでゆくヨンウンの生死は観ている私たちに明らかにされません。どうなったの!?と思っていたら場面変わって20年後。精神病棟にいる女性の顔は正面から映されることはなく、彼女に会おうともせずに帰るのがミン。きっとミンが偽名で本名はソヒョン、あの気の毒なオカンのヨンウンは一命は取り留めたけれどもアタマおかしくなって入院かぁと私たちは思わされます。

しかしヘヨンが登場した瞬間に誰もが「ん?」と思うはず。無愛想なミンよりも、へらへらと笑うヘヨンのほうがずっと不気味。表の顔と裏の顔がありそうなヘヨンをミンが調べてみると、ヘヨンがサイコパスである証拠が次々と出てきます。このままでは大変なことになるとヒョンギョンに訴えても取り合ってくれない。ヘヨン=ソヒョンがもう怖いのなんのって。

自分の子どもが生まれついての悪魔だったらどうしますか。子どものために何もかも抛つつもりでもどうにもならない。次は何をしでかすだろうと思うと気が気ではありません。自分のしたいことができないとヒステリーを起こす子どもの気持ちを鎮めるために、養鶏所で金を払って鶏を絞めさせたりもする。「見に来ないでください」と養鶏所のおっちゃんに頼むヨンウンの言葉には『鶴の恩返し』を思い出して笑ってしまったけれど、血だらけの鶏を前に満足そうなソヒョンが怖すぎます。

ミンとヘヨン=ソヒョンの格闘はもちろんミンを応援し、ミンが負けるわけもないと思いながら観るわけですが、丸焼けになってもまだ生きていますかね。生きていましたとか言って続編を作るのはやめてください(笑)。あれで死なないなんて、人間じゃないから。いや、人間じゃなくて悪魔なんだからありか。

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