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『ブルーボーイ事件』

『ブルーボーイ事件』
監督:飯塚花笑
出演:中川未悠,前原滉,中村中,イズミ・セクシー,真田怜臣,六川裕史,泰平,渋川清彦,井上肇,安藤聖,岩谷健司,梅沢昌代,山中崇,安井順平,錦戸亮他

扇町キネマってどこ? 昔ありましたよね、扇町ミュージアムスクエアって。20世紀の終わりにそこで『MONDAY マンデイ』(1999)を観たのを思い出します。試写会に当たって、ほぼ一緒に映画を観ることはないダンナと行ったら、「悔しいけど面白かった」と言っていたのでした。「悔しいけどって何やねん」と思った記憶があります(笑)。11月になんばで観逃した本作はもうどこでも上映されていないと思っていたら、その扇町キネマで上映中だと知って滑り込み。性別適合手術が違法か合法かを争った1960年代の実在の裁判“ブルーボーイ事件”に着想を得たという飯塚花笑の作品です。

東京オリンピックを控えた1965年。街の浄化を進める当局は街娼の一斉検挙を目論むが、性別適合手術を受けた戸籍上の男性、通称“ブルーボーイ”が男娼として街角に立っていた場合、現行の法律では取り締まることができずにいた。業を煮やす当局は、そもそも手術をおこなった医師・赤城昌雄(山中崇)に狙いを定めて逮捕する。

赤城の弁護を担当することになった弁護士・狩野卓(錦戸亮)は、手術の正当性を証明するためにブルーボーイたちに証言を求めることに。しかし最初に証言台に立ったメイ(中村中)は、男の気を引くために手術を受けただけだと面白可笑しく話すのみ。次のアー子(イズミ・セクシー)は心は女でありながら体は男であることへの辛さを語るが、狩野からそれはつまり治療を必要とする精神疾患ということかと問われて、病人扱いするのかと激怒。

もうひとり、赤城の手術を受けて狩野から証言を求められるも断ったサチ(中川未悠)は、メイやアー子らとは違い、いたって普通の女性として毎日を送っていた。すでに男性器切除の手術は終えており、すべてを知る恋人・若村篤彦(前原滉)からプロポーズされて、最後の女性器形成の手術が無事終わったあかつきには結婚すると決めている。もしも証言台に立てばマスコミに騒ぎ立てられるだろう。勤務先の店主(渋川清彦)や同僚からどう思われるかわからないし、篤彦にもきっと迷惑がかかるはず。葛藤する日々が続いたのち、やはり証言すると決意するのだが……。

ブルーボーイ事件自体を知りませんでした。こんな裁判があったのですね。

勇気を振り絞って証言台に立ったサチ。マスコミは好奇心のみのように見えます。検事・時田孝太郎(安井順平)は、男性は国家存続のためにその機能を果たすべきと言い放ち、法廷でサチのことを罵倒。それでも逃げようとしなかったサチは、手術を受けることが治療になったと言わせたい狩野の思惑に反し、手術を受けても何も変わらなかったと語ります。望んでいた女性の体になった、女性として愛された。それでも変わったと言えないのは、世間が何も変わっていないから。勝手な女性像を作り上げ、「元は男だった女」としてずっと見られつづける。男であろうが女であろうが私は私。このサチの話には胸を打たれます。

これをきっかけに少しは状況が変わったのだとしても、公に性別適合手術が認められたのは1998年のことだそうです。憲法第13条、幸福を追求する権利はいろんな場面で今も尊重されていません。

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