『ナイトコール』(原題:La Nuit se Traîne)
監督:ミヒウ・ブランシャール
出演:ジョナタン・フェルトル,ナターシャ・クリエフ,ジョナ・ブロケ,トマ・ミュスタン,ロマン・デュリス,サム・ルーウィック,ナビル・マラット,クレール・ボドソン,グレアム・ギット,マルコ・マース他
前述の『ザ・フー:ライヴ・アット・キルバーン 1977』の次に。本作目当てに塚口サンサン劇場まで行きました。ベルギーの新鋭ミヒウ・ブランシャール監督によるフランス/ベルギー作品。長編デビュー作ながら、ベルギーのアカデミー賞に当たるマルグリット賞で作品賞ほか最多の10冠に輝いたそうです。受賞にふさわしい面白さ。
鍵屋として働く青年マディは、鍵のトラブルで困っている人からの連絡を24時間受け付けて車を走らせる毎日。学生だから、本分の学業も怠らないように、時間を見つけては教科書を広げて勉強している。
ある晩、ひとつ仕事を片付けた後、クレールと名乗る女性から「鍵を紛失したので開錠してほしい」との電話が入り、指示されたアパートへと向かう。この仕事は開錠前の料金先払いがルール。また、部屋の持ち主以外からの開錠依頼があったときのために身分証の提示も求めるのが基本。マディが支払いと身分証を求めると、クレールはどちらも部屋の中にあると言う。致し方なく開錠して玄関で待っていると、大きなゴミ袋を抱えて出てきたクレールが、財布に金がないからATMで下ろしてくるのを待っていてほしいと。テーブルの上に置いてあるという身分証をマディが探すが、そんなものはどこにも見当たらない。するとクレールから電話があり、すぐに部屋を出るように言われる。しかし時すでに遅し。ドアを開ける音がして、部屋の本当の住人らしき、クレールではない男が帰ってきて、マディは危うく殺されそうになる。咄嗟に鍵屋の道具からドライバーを抜き出したマディがそれを男の首に突き立てると、男は死んでしまう。
殺害の現場から証拠を消そうとしていたところ、今度は別の男たちがやってくる。隠れたものの見つかって、車に押し込まれるマディ。どうやらマディが殺した男の部屋にあった大金がなくなっているらしく、マディが盗んだと思われているようだ。マフィアのボス・ヤニックのところへ連れて行かれたマディは、身分証を取り上げられ、凶器のドライバーも没収される。金を盗んだのがマディでないならば、犯人を見つけて金を取り返すように言われ……。
テンポが良くて画面に釘付け。とても面白い。どういう事情で鍵屋をしているのかわかりませんが、おそらくマディは苦学生。誠実そのものに見えます。だけどかつては強盗の前科もあるようで、警察にコネのあるヤニックは、黒人のデモが繰り広げられている街で逃げたマディを見かけたら連絡するようにと警察官にも指示しています。冷酷極まりないヤニックをロマン・デュリスが演じているのが個人的には可笑しい。ほんと、どうしてあんなイケメンがこんなむさ苦しいオッサンになっちゃったんだろう(笑)。
心に染み入るような切なさはありません。でもマディの最期の安心した顔を見るとちょっとだけ切ない。自分をこんなことに巻き込んだ女のことを可哀想だなんて思わずにとっとと売り渡してもいいのにと私は思いますけどね。(^^;
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