『コート・スティーリング』(原題:Caught Stealing)
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:オースティン・バトラー,レジーナ・キング,ゾーイ・クラヴィッツ,マット・スミス,リーヴ・シュレイバー,ヴィンセント・ドノフリオ,ベニート・A・マルティネス・オカシオ他
イオンシネマ茨木にて。
『ザ・ホエール』(2022)のダーレン・アロノフスキー監督が『エルヴィス』(2022)のオースティン・バトラーを主演に起用して、チャーリー・ヒューストンのベストセラー小説を映画化。ヒューストンは1968年生まれのアメリカ人作家で、この原作は2004年に上梓された作品なのだそうです。舞台は1990年代後半のニューヨーク。
高校時代は将来を嘱望される野球選手だったハンク・トンプソン。メジャーリーグ入りは間違いないと噂されていたのに、ドラフトを目前に控えた日、自ら運転していた車で事故を起こす。同乗していた友人はフロントガラスを突き破って車外に放り出され、即死。ハンク自身も膝から骨が見えるほどの大怪我を負ってメジャーリーガーの夢は潰える。あれから長い月日が経った今、別の夢を叶えるでもなく、場末のバーテンダーとして生計を立てているハンク。唯一の心の拠り所はそんな彼でも見捨てずにつきあってくれる恋人イヴォンヌ。
ある日、隣室のラス・マイナーが危篤の父親に会うためにロンドンへ帰るから飼い猫のバドを預かってくれと言う。断ろうとしても押しつけられ、仕方なくラスを見送るハンク。ところがその後にやってきたロシアンマフィア2人組に殴る蹴るの暴行を加えられ、ラスの居場所を教えろと言われる。同階の住人が警察に通報しようとしてようやく立ち去るマフィア。腎臓をひとつ切除するほど傷つけられたハンクに、女刑事エリース・ローマンが事情を聴きにくる。エリースが言うには、ラスは手を出してはならない金をくすねたらしく、ロシアンマフィアのみならず血も涙もないユダヤ人のドラッカー兄弟がラスの行方を追っているとのこと。どちらもヤバすぎるから、とにかく何か思い出したら連絡を寄越すようにとエリースは言う。
そうは言われてもまるで心当たりがない。ロシアンマフィアとドラッカー兄弟が探している「何か」をラスは本当に持っているのか。そうならばどこに隠しているのか。なんとかして見つけ出さなければ自分の周囲にいる人まで酷い目に遭わされるだろう。困り果てたハンクがふと気づいたのは猫用トイレで……。
アロノフスキー監督のイメージといえばデビュー作の『π』(1997)と第2作の『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000)が凄すぎて、どうにも私には消化しきれない作品を撮る人だと思っていました。『ブラックスワン』(2010)を観てもその思いは変わらず、常に難解。ところがこれはどうでしょう。途中で「これってホントにアロノフスキー監督なの?」と思ったほど。ガイ・リッチー監督っぽいです。とてもわかりやすい話で、痛々しくはあるけれどエンタメ感満載。イヴォンヌが早々と殺されてしまったのは意外で唖然としましたが(泣)(ネタバレ御免)、ハッピーエンドだし。
こちらも歳を取ったから、あんまり難解なのを見せられるよりも、こんなふうにわかりやすい話をドドーッとテンポ良く見せられるほうが楽しめます。すっかり素直で丸くなったアロノフスキー監督、大歓迎。オースティン・バトラーはイケメンだし、ドラッカー兄弟役のリーヴ・シュレイバーとヴィンセント・ドノフリオがワラける。原作出版後10年経たないうちに映画化の話が出たさいは、パトリック・ウィルソン主演が考えられていたそうです。いや、絶対バトラーのほうがいいでしょ。ハンクが毎日欠かさず電話している母親はずっと声のみの出演ですが、最後の最後に誰が演じていたのかわかる。クレジットなしでローラ・ダーン。この彼女の驚いた顔、めちゃくちゃよかったなぁ。
ちなみに原題の“Caught Stealing”は「盗塁死」の意。ちゃんと成功しています。猫のバドが可愛すぎ♪
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