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『キムズビデオ』

『キムズビデオ』(原題:Kim’s Video)
監督:アシュリー・セイビン,デヴィッド・レッドモン

テアトル梅田にて、前述の『鯨が消えた入り江』の次にこんなドキュメンタリー作品を。

子どもの頃にチャップリンを観て映画が大好きになった韓国人キム・ヨンマン氏は、アメリカンドリームを求めてニューヨークへ。クリーニング業で財を成し、レンタルビデオ店“キムズビデオ”を開業します。そこには世界中で収集した55,000本に及ぶ映像作品が取り揃えられ、多くの映画ファンたちが日夜通いつめる有名な店に。しかし、配信が主流になってレンタルビデオの時代は終焉。キムズビデオは惜しまれつつも2008年に閉店したそうです。

あの膨大な数のビデオはその後いったいどうなったのだろう。ふとそう考えたのが、キムズビデオの会員だったデヴィッド・レッドモン。ビデオの行方を調べてみると、シチリア島の村サレーミに丸ごと移設されていたことがわかりました。村あげての事業で受け入れられ、住民たちに開放されることになっていたらしい。

ところが、あのコレクションを再びこの目で見たいとサレーミを訪れてみると、雨漏りするような部屋で埃をかぶったビデオの山。このビデオたちは救出されたいと思っている。そう感じたデヴィッドは、もう一度このコレクションが日の目を見るようにしようとあの手この手を考えます。

さすがシチリアと思って笑ってしまったのが、この村に移設することになったのもマフィアとの癒着が疑われる政治家が絡んでいそうだということ。ビデオだよビデオと思うけど、イメージアップのためには何でも利用されるのですね。

どうやって取り返すのだろうと思ったら、最終的には強奪(笑)。とにかくビデオが保管されている部屋に入れないことにはどうにもできないから、この村で映画を撮りますよと偽って、市長から入室の許可を取り付ける。そしてエキストラのふりをして入室すると、コレクション丸ごと箱詰めしてどんどんトラックに積むという荒技。サレーミに移設したのは失敗だったと思っているキム氏も、一旦譲渡してしまったのだからと取り返すことをあきらめていましたが、まさかキムズビデオのファンが盗みを働いてまでコレクションを取り戻してくれるとは驚いて笑うしかない。体裁を気にするサレーミ市長は、自分たちがいかに寛容な心の持ち主で、返還に協力的だったかを公にしてくれればそれで良いんだそうで。(^^;

『市民ケーン』(1941)だとか『ビデオドローム』(1982)だとか、出てくる映画は数知れず。こんなことがあったんだと驚くとともに、そのハッピーエンドが映画ファンなら嬉しくなる作品です。

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