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『たしかにあった幻』

『たしかにあった幻』(原題:Yakushima’s Illusion)
監督:河瀬直美
出演:ヴィッキー・クリープス,寛一郎,尾野真千子,北村一輝,永瀬正敏,中野翠咲,中村旺士郎,土屋陽翔,吉年羽響,山村憲之介,亀田佳明,光祈,林泰文,中川龍太郎,岡本玲,松尾翠,早織,小島聖,平原テツ,利重剛,中嶋朋子他

イオンシネマ茨木にて、前述の『ツーリストファミリー』の次に。

河瀬直美監督によるフランス/ベルギー/ルクセンブルク/日本作品。世界的に評価の高い監督ではありますが、私はこの「なんとなく高尚な感じ」が苦手です。主演は『エリザベート1878』(2022)のヴィッキー・クリープス

フランスから来日した移植コーディネーターのコリー(ヴィッキー・クリープス)。神戸の臓器移植医療センターで働きつつ、小児臓器移植医療の促進に取り組んでいるが、思うようには進みそうにない。というのも、日本の死生観や倫理観は西欧のそれとはあまりにも違い、医療現場の体制そのものの改善や医療従事者の意識を改革することは困難を極めるから。無力感にさいなまれながら屋久島を訪れたある日、迅(寛一郎)と出会う。

その後、ふたりはささやかなやりとりを重ねていたが、七夕の日に迅がコリーの部屋に突然やってきてから同棲を開始。迅はコリーの心の支えとなる。しかし、仕事でストレスを抱える彼女と迅が言い合いになり、翌日コリーが帰宅するとそこに迅の姿はなかった。傷心のまま1年が経過したとき、迅が失踪するはるか前に彼の家族から失踪届が提出されていたことを知ったコリーは、彼の実家を訪ねるのだが……。

私にはたぶんこの物語の上っ面を見ることしかできていません。だから些細なことが気にかかる。些細と言っていいのかどうかすらわからないのですが、たとえば、心臓疾患を抱える少年・久志(中村旺士郎)が初めてコリーに会ったときのこと。挨拶するコリーに向かって、久志は「おまえ誰?」「おまえどこから来た?」「嫌なことがあって逃げて来たんだろ」と言います。なんぼ子どもでも大人の女性、しかも今から入院する病院の先生を「おまえ」呼ばわりしますか。それが段階を経ていい子になっていくわけでもなく、入院中の少女・瞳(中野翠咲)と会ってからはいい子になる。また、コリーが話すのはほぼフランス語だけど、通訳もなしにそれをふんふんと聴いている子どもや親の顔を見ると、意味わかるわけないやん、これってファンタジーなのかと思ってしまうのです。迅が出て行った後、写真店でフィルムを現像してもらおうとしたら、カメラにはフィルムが入っていなかったことから何を想像すればいいのかもわからない。“Yakushima’s Illusion”という原題に込められた意味も私には理解不能。

ただ、臓器移植の現状には考えさせられるところが多い。先進国の中で日本の臓器移植率は最低。移植希望者が移植に至るまでの時間も、スペインでは3カ月を切り、日本では4年以上かかる。移植を希望するということは、誰かが死ぬのを待っているように思われるのが日本で、西欧ではそれが贈り物と捉えられるのだということも。これがアメリカとなると『ハート』(1999)みたいな作品もあることですし、また異なるのでしょうか。この監督は好きじゃないでは済ませられない作品ばかりなのが河瀬監督。

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