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『おい、太宰 劇場版』

『おい、太宰 劇場版』
監督:三谷幸喜
出演:田中圭,小池栄子,宮澤エマ,梶原善,松山ケンイチ

公開初日、仕事帰りに109シネマズ箕面にて。

三谷幸喜の完全ワンシーンワンカットシリーズ第3弾!」と銘打たれていますが、第1弾と第2弾が何やったか知らんし。調べてみたらWOWOW制作のシリーズで、三谷幸喜のオリジナル脚本を彼本人が監督を務めて一度もカメラを止めずに撮るというのがウリのシリーズらしい。第1弾が『short cut』(2011)で中井貴一鈴木京香の共演、第2弾は『大空港2013』(2013)で主演が竹内結子。そしてその両方に出演している梶原善がこの第3弾で一人三役を務めています。WOWOWでは6月29日に放送され、7月11日に劇場版として公開されました。

友人の結婚式に参列した夫婦・小室健作(田中圭)と美代子(宮澤エマ)は、北鎌倉からバス停を探して歩くも見つけられず。地元民の打雷次郎(梶原善)を見つけて道を尋ねるが、兄の四郎(梶原善)と電話で白熱中の彼はバス停の場所をなかなか教えてくれない。ようやく聞き出してバス停に向かおうとしたそのとき、健作はここが太宰治ゆかりの地であることに気づく。

ここ八里ヶ浜は、まだ無名だった太宰治(松山ケンイチ)がカフェーの女給をしていた矢部トミ子(小池栄子)と心中をはかった場所で、今日はまさに同じ日。興奮を抑えきれず、太宰がいたこの浜辺を散策しはじめる。すると、洞窟を抜けた先には当時の太宰とトミ子がいるではないか。しかも打雷兄弟の父親・四郎次郎(梶原善)まで生きている。この心中が未遂に終わり、太宰は生き残って『人間失格』を執筆し人気作家となるものの、トミ子は死んでしまうことを知っている健作はどうすべきか迷い……。

鑑賞後にあらためてWikiなどを読んでみると、太宰ってめちゃめちゃ死のうとしていた人なんですね。20歳で初の自殺未遂(「初の」と言うのも変だけど)、約1年後に今度は初の心中未遂。これが本作のモチーフになっているようで、鎌倉の小動岬で女給と心中を図り、彼だけ生き残って彼女は死亡。その後も試験に落ちては自殺を図り、嫁の不倫を知っては嫁と心中を図り、それでもモテモテで再婚して愛人もいて、どちらとの間にも子どもを授かって、すごいやっちゃなぁ。結局最後は心中を果たして本望だったでしょうか。

三谷幸喜だから、こんな太宰の心中事件もあっけらかんと描いています。自分だけ死んでしまうのだと知ったトミ子は、途中でそんなの嫌だわと思うけれど、心中相手を探しているとしか思えない太宰が美代子をその相手に選びそうになったときライバル心が芽生える。そして、心中から生き延びてみせるとにこやかに健作に言い放つ姿が良いです。

田中圭の起用は間の悪いこととしか言いようがありませんが、それはそれ、これはこれで観りゃいいと思います。そもそも私は不倫否定派ではないから、田中圭と永野芽郁のことはどうでもいい。しかし、どうでもいいからそれとは切り離して考えて観に行ったほうがいい作品だよとまでは言えません。少なくとも三谷幸喜の前作『スオミの話をしよう』(2024)よりは面白かったですけどね。

ところでTVドラマ版と劇場版には何か違いがあるんですか。

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